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スキルアップ税務

社長貸付金・社長借入金消去の税務 ~証拠の論点も踏まえて~⑭

2023/10/23

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重要情報2
〇貸倒損失/元代表者に対する貸付金等の回収可能性/代位弁済の成否
東京地方裁判所平成24年(行ウ)第811号更正及び加算税賦課決定取消請求事件 平成25年10月3日判決Z263-12301

(判示事項)
1 本件は、原告が、平成19年12月1日から平成20年11月30日までの事業年度の法人税について、貸倒損失として3億8,642万4,236円を計上した上で、確定申告を行ったところ、処分行政庁が、貸倒損失の計上を否認し、更正処分等を行ったことから、その取消しを求める事案である。

2 原告は、平成19年12月5日、乙の銀行口座に3億0,121万8,630円を振込送金し、同日、本件借入金(乙が、原告からの借入金の一部を返済するためにC信金から借り入れたもの、丙及び甲が連帯保証人、原告は根抵当権設定者兼連帯保証人)の元金残額と最終利息の合計3億0,121万8,630円が乙名義の預金口座からC信金に送金されて返済され(本件返済)、これにより本件借入金は完済された。被告は、本件返済について、実質的には原告がしたものであり、代位弁済が成立すると主張するが、事実関係を前提として検討すると、本件返済は、代位弁済が成立するために必要となる要件である、原告による債権者(C信金)に対する返済という事実を欠いている上、本件返済の相手方であるC信金も代位弁済であるとは認識していなかったことがうかがわれるところであるから、代位弁済の成立を認めることはできない。

3 したがって、代位弁済の存在を前提とする被告の主張はいずれも理由がなく、原告は、本件借入金に係るC信金の乙に対する貸付債権を代位行使することはできないから、これに基づいて丙及び甲に対する保証債権を行使することもできない。よって、原告が各保証債権を行使し得ることを理由として、本件事業年度末において、本件貸付金等の回収可能性が存在したということはできない。

4 法人の各事業年度の所得の金額の計算において、金銭債権の貸倒損失を法人税法22条3項3号にいう「当該事業年度の損失の額」として当該事業年度の損金の額に算入するためには、当該金銭債権の全額が回収不能であることを要すると解される。そして、その全額が回収不能であることは客観的に明らかでなければならないが、そのことは、債務者の資産状況、支払能力等の債務者側の事情のみならず、債権回収に必要な労力、債権額と取立費用との比較衡量、債権回収を強行することによって生ずる他の債権者とのあつれきなどによる経営的損失等といった債権者側の事情、経済的環境等も踏まえ、社会通念に従って総合的に判断されるべきものである〔最高裁平成14年(行ヒ)第147号同16年12月24日第二小法廷判決・民集58巻9号1637頁参照〕。

5 被告は、本件株式贈与(乙から甲らに対する原告株式及びB社株式の贈与)並びにこれに対する原告及びB社の取締役会がした各承認について、本件各株式は乙の主要な財産であったから、本件各株式を対価を得ずに贈与したのは不自然であり、これを承認したのも本件貸付金等を回収する機会を放棄したものであると主張する。しかし、甲らは、甲らが本件各株式を乙から有償で取得することを検討したものの、甲らは本件各株式の合計評価額である8,351万4,000円を捻出することはできなかったため、これを断念し、贈与税は発生するもののより少ない負担で本件各株式を譲渡できる方法として、本件株式贈与を選択したと認められるところ、かかる選択は格別不自然とはいい難いから、本件株式贈与及び本件承認決議をもって、原告があえて本件貸付金等の回収を放棄したとはいうことができない。

6 乙は、本件事業年度末である平成20年11月30日時点において、本件貸付金等の返済に供せる程の資産を有していなかったことが認められるから、同日時点において、本件貸付金等の全額が回収不能となっていたことが認められる。

7 以上によれば、原告は、本件事業年度において、本件貸付金等(3億7,872万4,236円)を損金計上することができる。

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