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スキルアップ税務

社長貸付金・社長借入金消去の税務 ~証拠の論点も踏まえて~⑯

2023/12/13

1)
 中小企業の場合、当該関連法人間の利益移転は手法が定型化しています。それについてのエビデンスを検証していきます。

 兄弟会社間でもよいのですが、親子会社間のほうが典型的でわかりやすいため、親子会社間の場合により検証していきます。兄弟会社間でも実行することは変わりありません。下記は、親子会社間における典型例です。

 現状、持株会社に滞留欠損金が生じているとします。欠損金の解消策として役員報酬の低減、子会社から不動産を現物分配で吸い上げて賃料収入収受、赤字子会社の合併による欠損金引継ぎなどを検討しているとします。しかし、それでも期限切れ欠損金が数億円見込まれるものとします。なお、子会社が多く、事務負担からグループ通算制度は最後の手段と考えています。

 現状の持株会社の実態としては、各社の社長が持株会社の役員会を構成して毎月グループ経営会議を行います。また、従業員も20数名ほど予定し、システム投資やグループの規程管理なども担います。そこで、子会社から経営指導料を取ることを検討したところ、毎年各社の経常利益から50%という方法が、欠損金解消及び各社の財務・損益バランスの両立という観点からは理想的と試算されたとします。年商や利益規模が相応にあって全社会議などの実態もあれば、非上場でも利益連動で徴収する部分があってもいいようには思います。

 では、経営指導料の算出方法や水準について、考え方や認められるケースなどエビデンスという観点から検証します。

 従来、前提として中小・零細企業においては、子会社から親会社(特に持株会社)への利益移転(「収益付け」といいます)は「配当」と「受取賃料」のみといわれていました。それ以外は寄附・受贈認定される可能性が極めて高かったのです。

 ところが平成22年のグループ法人税制の導入により、それほど神経質になる必要はなくなりました。認定したところで課税所得は変化しないからです。現状、当局調査においても、最近の裁決・裁判例においても当該論点に関しては減少しました。ただし、グループ法人税制適用外の法人間では従来と同様、税務調査の念査項目です。

 平成12年2月3日東京地裁では、
「原告会社がグループ企業の国内統括会社に支払った経営指導料の一部は、国内統括会社に対する寄付金にあたるとの課税庁の主張が、原告会社と国内統括会社は全世界的に展開されるグループの事業の一端を担う機能を果たしていたこと、原告会社は日本国内における販売及び国外グループ会社に対する輸出の各事業に関して、その多くを国内統括会社に依存し、国内統括会社は各事業に関して経営上の助言、人的資源の提供、法務、市場調査、広報活動などの事務を負担していることが認められることを勘案すると、原告会社が総輸出売上高及び輸入国内販売高の1パーセントを経営指導料として支出したことは、必ずしも特殊な企業関係に基づく租税回避のための価格操作とは認められないとして排斥された事例」とあります。

 しかし、当該法人(原告納税者)は極めて大きな法人で、これをそのまま中小企業に落とし込むことは現実的ではありません。

 当該指導料の水準の根拠ですが、実務通説で〇%といったものも特段存在しません。先述の不動産管理会社における不動産管理手数料と同じ考え方(=証拠への接近性)で当該水準・比率の疎明は納税者に転嫁されます。

 公開企業ベースになりますが、下記のレポートは有名です。
〇経営管理に対する対価についてのアンケート報告(2014年11月1日発行)みずほ総合研究所32
〇持株会社はどのような子会社管理を行っているか(2013年5月27日発行)みずほ総合研究所33

 上記1つ目のレポートに関しては率や率の算定根拠等々、2つ目のレポートに関しては実態をどのようにするか、といった点で非常に参考になります。不動産管理会社の不動産管理手数料と同様ですが、前提として実態がなければ、一切の金額が指摘項目となります。真実の実態があり、当該実態を疎明するには、との前提での証拠化の方法が下記です。

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