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税理士が関与先の為に知っておきたい金融知識

令和7年度税制改正大綱でNISAやiDeCoはどう変わる?

2025/01/31

 2024年12月27日、令和7年度税制改正大綱が閣議決定されました。「いったいどこが変わるの?」などと、例年同様、不安の声があちこちから聞こえてきます。税制改正大綱はまだ改正案ですが、どう変わるのか、ざっくりとお伝えできると関与先様も安心ではないでしょうか。
 そこで、今回は関心の高いNISAとiDeCoの改正案を見ていきます。

■「NISA」のさらなる利便性向上等

 
 NISAでは、次のような利便性向上等のための改正案があげられています。

◎つみたて投資枠におけるETF(上場投資信託)の環境整備

 ETFの最小単位が10,000円(現状1,000円)以下に引き上げられる予定です。そもそもETFとは、「Exchange Traded Funds」の頭文字を取ったもので、上場株式と同様、取引所に上場している投資信託です。
 たとえば、東証株価指数(TOPIX)に連動する商品などがあり、少額から分散投資が可能で、一般的な投資信託に比べて手数料や運用コストが安く、長期投資に適した商品といわれています。
 しかし、つみたて投資枠におけるETFの買付額は、約179億円で全体の0.5%に留まっています(金融庁「NISA口座の利用状況調査」2024年9月末時点)。このため、投資初心者に適した指数連動型ETFを購入しやすい環境整備が改正案に盛り込まれました。

◎金融機関変更時の即時買付が可能に

 金融機関変更の場合、口座開設申込み時に即日買付が可能になる予定です。

◎金融機関変更時の即日買付


出所:金融庁 令和7(2025)年度税制改正について

 仮に二重口座等であった場合には、変更手続時まで遡って課税口座(特定口座又は一般口座)へ移管されます。これにより、金融機関を変更しても現状よりも投資のタイミングを逃さずにすむ効果が期待できます。

■iDeCo(イデコ)限度額の引き上げ、加入年齢も拡大

 
 iDeCo関連では、次のような見直しの改正案があがっています。

◎企業型確定拠出年金(以下、企業型DC)の拠出限度額の引き上げ

〈確定給付企業年金の加入者〉

 ・・・月額6.2万円(現在:月額5.5万円)から確定給付企業年金の掛金相当額を控除した金額

〈確定給付企業年金の未加入者〉

 ・・・月額6.2万円(現在:月額5.5万円)

◎企業型DCのマッチング拠出の緩和

 企業型DCのマッチング拠出について、企業型DC加入者の掛金が事業主掛金額を超えることができない要件が廃止

◎iDeCoの加入年齢拡大

 60歳以上70歳未満でも、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給していないなどの条件を満たす場合、月額6.2万円まで加入可

◎iDeCo掛金限度額の引き上げ

〈第1号被保険者(自営業者など)〉

 ・・・月額7.5万円(現在:月額6.8万円)

〈企業年金加入者〉

 ・・・月額6.2万円から確定給付企業年金・企業型DCの掛金を控除した金額(現在:月額2万円)

◎国民年金基金の掛金上限引き上げ

 国民年金基金の掛金上限が、月額7.5万円に引き上げ(現在:月額6.8万円)

〈企業年金未加入者(第1・3号被保険者を除く)〉

 ・・・月額6.2万円(現在:月額2.3万円)

■退職所得控除の「5年ルール」が10年に引き上げ


 改正案では、退職金などの支払いを受ける場合の退職所得控除の5年ルールが、10年に引き上げられる予定です。
たとえば、現状では、60歳でiDeCoを一時金で受け取り、その後、65歳以降に退職金を受け取れば、iDeCoと退職金のどちらも退職所得控除をフルに使うことができます。改正案では7 0歳以降に退職金を受け取らないとiDeCoと退職金の重複期間分の退職所得控除額が減少することになるため、一層、退職金の受取り方で差が生じます。この改正案は、令和8年以後から適用となる見込みです。

■早めの対策を


 実際に改正施行されるまでは、まだ変更も予想され時間もかかりますが、この方向で改正されれば、税負担や手取額に相当な影響があるでしょう。そのため、改正案を視野に入れつつ、早めに老後資金や将来のライフプランの再検討をされることをおすすめします。

アドバイザー/中島 典子 税理士
社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(日本FP協会 CFP®認定者・1級ファイナンシャルプランニング技能士)
公益財団法人日本数学検定協会 ビジネス数学インストラクター、住宅ローンアドバイザー
一般社団法人相続診断協会 相続診断士
【主な著書(共著含む)】
『会社が知っておきたい 補助金・助成金の申請&活用ガイド』(大蔵財務協会)
『ムダなく、ムリなく、かしこく 資産づくりのキホン』(清文社)
『定年前後の手続きガイド』(宝島社)、『金持ち定年、貧乏定年』(実務教育出版)など多数。

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