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税理士が関与先の為に知っておきたい金融知識

第1回 なぜ、税理士による「お金のサポート」が重要なのか?

2024/05/10

「税理士は税金の話しかしない」
「税理士にお金や運用の話をしてもわからない」
「不動産を買いたいけれど、税理士に聞いてもよくわからない」

 税理士としてかけだしの頃、このような経営者の声が本当に多く聞こえてきました。それから20年経った今でも、まだあの時と同じ声が聞こえてきます。このとても悲しい「勘違い」を一つでも減らしたい、そんな想いをずっと抱えてきました。そのためには、数字やお金が苦手な経営者の方でも、わかりやすく伝えられることが不可欠です。そこで、本コラムでは、税理士の先生やスタッフの皆様が現場で即使えるお金の話について、はじめて話を聞く方向けにゼロからわかりやすくお伝えしてまいります。

■なぜ、いまだに悲しい「勘違い」が起こっているのか?

 「税理士にはお金の話をしてもわからない」と、経営者からなぜそのように思われるのでしょうか。実は、それは経営者の「勘違い」なのです。つまり、税理士が経営者に話をしないから、「税理士にお金の話をしてもわからない(だろうと経営者は思い込んでいる)」のです。では、この悲しい勘違いを一つでも減らすには、どうすればよいのでしょうか?

 それは、「わかりやすく伝えること」。ただ伝えればよいのではありません。

 経営者の方でも、数字やお金が苦手な方は少なくありません。税法のことをお伝えする時でも、専門用語ばかりでは「難しい、わからない!」と心のシャッターを下ろしてしまう方も多数いらっしゃいます。でも、もし、苦手な方にもわかりやすく伝えることができたら、興味関心を持って話を聞いてくれるのではないでしょうか。実際に、こちらからわかりやすく話をすることで、「もっと知りたい、詳しく教えてほしい」という経営者が多数いらっしゃいます。

 一番経営者に近い存在である「税理士」に、いつでもお金の相談ができたら…

 そう、思っている経営者は意外と身近にいらっしゃいます。そこで、税務以外のお金の知識を発信することで、悲しい勘違いがなくなり、お金のことがわかる税理士として見られるようになれば、経営者が安心して税理士にお金の相談ができます。

 ご承知のとおり、経営者は忙しい方ばかりです。資産運用をしたいと思っても、自分だけではなかなか難しい方も多いでしょう。経営者にはできるだけ、本業に注力してほしいところ。そこで、税理士のサポートがあるかないかが重要なポイントになってきます。

 また、税理士がサポートをすることのメリットは、経営者がしっかり資産形成できるだけではありません。税理士にとっても、税務に「お金のサポート」という新たな業務の幅が広がるメリットが期待できます。

■50代の経営者への資産形成支援の必要性

 50代の経営者。まだまだ現役バリバリだと思っているものの、以前より体力が減ってきたな…と、いずれはリタイアすることも考えるようになってくる頃です。リタイア後に思い描くのは、やはり「ゆとりのある生活」。ゆとりとは、やりたいことが、いつでも好きな時にできる自由な選択肢が持てているかだと考えます。このゆとりには、心と物の2つがありますが、お金はいずれの「選択肢」も増やしてくれます。そのためには、資産形成がしっかりできているかどうかがポイントです。

 しかし、もう50代。いまさら資産形成と言われても遅い、という声も少なくありません。でも、まだ50代です。今からでも10年、15年しっかり資産運用ができれば、確実に選択肢は増えます。もし、このまま何もしなければ、何も変わりません。もし、インフレが進めば預金は目減りする一方というリスクも回避できないでしょう。

 とはいえ、忙しい経営者が自分でゼロから調べて資産運用をするのは、手間や時間もかかり本業にも影響が出かねません。だからこそ、「お金の話ができる税理士」のサポートが不可欠なのです。

■人生100年時代の資産運用

 人生100年時代。長い老後を豊かに幸せに過ごすには、それを支えるお金が不可欠です。

 資産運用は、「お金に働いてもらう」こと。そのための土台がお金の知識=金融知識です。もちろん、経営者が本業で利益をあげることはとても大事なことですが、それに加えて「お金に働いてもらう」ことができれば、自分で働くお金とは別に、同時に資金を増やすことができます。

 経営者の資産形成がしっかりできていれば、万一経営に大きな波が押し寄せた時でも、経営者個人の資金で会社を守ることができます。金融知識は、経営者個人の資産形成に役立つと同時に、資金の面から本業の下支えすることができるのです。

 政府では、2022年11月の「資産所得倍増プラン」策定に続き、2023年6月「資産所得倍増元年」として「貯蓄から投資へ」のシフトを大胆かつ抜本的に進めていくことが発表されました。新しい資本主義の下、我が国の家計金融資産の半分以上を占める現預金が投資に向かい、企業価値向上の恩恵が家計に還元されることで、更なる投資や消費に繋がる「成長と分配の好循環」を実現していくことが重要であると考えています。

 人生100年時代において、個々人の生き方や働き方も多様化し、結果、ライフプラン(人生設計)もより多様化しています。そのため、一人一人のライフプランにあわせた資産形成をすることが重要になっています。

 このように、ライフプランにあわせた資産形成を進められるようNISA(少額投資非課税制度)が抜本的に拡充・恒久化されました。NISAは少額な投資が非課税になる制度です。つみたて投資枠と成長投資枠の2つがあり、併用も可能です。累計で最高1,800万円までの投資が非課税になります。

 つみたて投資枠なら月10万円まで、成長投資枠なら月20万円までが非課税の目安です。

 資金に余裕のある方なら、つみたて投資枠・成長投資枠の両方をフル活用することもできます。資産運用もNISAもはじめてという方なら、まずはつみたて投資枠からはじめて様子を見て金額を増やす方法もよいでしょう。

                                 出所:金融庁

 

NISA活用例 成長投資枠も活用!一気に積立パターン

                                  出所:金融庁

■税理士だからこそできる、金融知識の伝え方

 NISAのような税理士の専門分野である税制の知識は、経営者であっても難しくわかりにくいものですが、税理士だからこそ、わかりやすく伝えることができます。経営者がわかる言葉で、わかりやすく伝えることで、経営者も自分ごととして考えるきっかけになるでしょう。

 学生だけでなく、社会人の方でも、特にはじめて金融知識を学ぶ方には、「中学生でもわかるように話す」とよいと言われます。以前より小学校からお金の大切さや金銭感覚を身に付ける授業は行われてきましたが、高校の金融教育授業だけでなく、大学でも授業に取り入れるなど、学生でも金融知識を得る機会が広がるようになりました。今後、経営者の周りにも、金融知識がある学生が増えていくでしょう。

 ニュースでもお金の話を聞かない日はありません。現場では、経営者の方からも色々と聞かれることもあると思います。その際、まずは、簡単に受け答えができる程度の情報は、是非頭に入れておきたいものです。さらに、経営者がわかる言葉で、わかりやすく話ができることをおすすめいたします。

アドバイザー/中島 典子 税理士
社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(日本FP協会 CFP®認定者・1級ファイナンシャルプランニング技能士)
公益財団法人日本数学検定協会 ビジネス数学インストラクター、住宅ローンアドバイザー
一般社団法人相続診断協会 相続診断士
【主な著書(共著含む)】
『会社が知っておきたい 補助金・助成金の申請&活用ガイド』(大蔵財務協会)
『ムダなく、ムリなく、かしこく 資産づくりのキホン』(清文社)
『定年前後の手続きガイド』(宝島社)、『金持ち定年、貧乏定年』(実務教育出版)など多数。

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