令和2事務年度の法人税調査 簡易な接触は前年比1.5倍の6万8千件
2021/12/08
国税庁はこのほど、令和2事務年度法人税等の調査事績の概要を公表した。
それによると、資料情報と提出された申告書などの分析・検討を行った結果、大口・悪質な不正計算が想定されるなど、調査必要度が高い法人2万5千件(前年対比32.7%)について実地調査を実施したところ、法人税の非違があったのは2万件(同35.0%)、その申告漏れ所得金額は5286億円(同67.7%)、追徴税額は1207億円(同73.4%)だった。
また、申告内容に誤りなどが想定される納税者等に対して、税務署において書面や電話による連絡や来署依頼による面接により、納税者に対して自発的な申告内容の見直しなどを要請する「簡易な接触」を行っているが、令和2事務年度においては自発的な申告内容等の見直し要請を6万8千件(同156.5%)実施。その結果、申告漏れ所得金額は76億円(同179.2%)、追徴税額は62億円(同228.7%)、調査1件当たりの追徴税額は780万6千円(同249.0%)となっている。
法人消費税については、9万5千件(同101.4%)の実地調査を行い、このうち消費税の非違があった法人は5万6千件(同100.6%)、追徴税額は800億円(同106.9%)だった。
新型コロナの影響により、調査件数は大幅に減少したが、調査1件当たりの追徴税額は増加するほか、簡易な接触による追徴税額も大きく伸びている。
主な取組みとしては、虚偽の申告により不正に消費税の還付金を得ていると認められる法人を的確に選定し、厳正な調査を実施。令和2事務年度は、消費税還付申告法人のうち3066件(同52.5%)に実地調査を行い、消費税219億円(同103.0%)を追徴課税した。また、そのうち510件(同72.1%)は不正に還付金額の水増しなどを行っており、34億円(同137.1%)を追徴課税した。
また、国税庁では、無申告法人を的確に管理するとともに、稼働無申告法人に対する調査についても重点的に取り組んでいる。令和2事務年度においては、事業を行っていると見込まれる無申告法人に実地調査を実施し、法人税51億4300万円(同80.7%)、消費税110億3800万円(同209.2%)、合わせて161億8100万円(同138.9%)を追徴課税した。このうち、稼働している実態を隠し、意図的に無申告であった法人に対して法人税33億700万円(同79.8%)、消費税61憶5100万円(同326.2%)を追徴課税した。
そのほか、海外取引法人等については、国外送金等調書をはじめとした資料情報等から選定し、租税条約等に基づく情報交換制度を積極的に活用するなど、深度ある調査を実施。令和2事務年度は、実地調査を4569件(同34.8%)実施したところ、1424件(同39.2%)において海外取引等に係る非違があり、申告漏れ所得金額を1530億円(同63.5%)把握した。