悪質な滞納に法的手続き 147件の原告訴訟を提起
2025/10/22
国税庁では、通常の滞納処理の手法では処理進展が図られない事案に対し、訴訟手法を活用した滞納整理に取り組んでおり、令和6年度には147件の原告訴訟を提起した。

例えば、滞納法人が代表者に対してした弁済が、債権者を害する行為に該当するとして、詐害行為取消訴訟を提起した事例。
① 事実上廃業していた滞納法人の代表者であるAは、滞納法人に対して貸付金を有していた。
② 滞納法人は、証券会社に預け入れていた株式を売却し、その売却代金は滞納法人の預金口座に振り込まれた。
③ 売却の翌日、Aは、貸付金債権の一部の弁済として、滞納法人からその売却代金の全額の振込みを受けた。
④ 国は、当該弁済は、滞納法人が支払い不能の時に、Aと滞納法人が通謀して他の債権者を害する意図をもってされたものであり、債権者を害する行為に該当するとして、詐害行為取消訴訟を提起した。
その後、国の主張を認容する判決がなされた結果、Aから弁済金額相当額の履行を受けた。
また、国税庁では、財産の隠蔽等で国税の徴収を免れようとする悪質な事案には滞納処分免脱罪の告発を行っており、同6年度には6件(8人(社))の事案を告発した。
例えば、滞納処分の執行を免れるため、滞納法人の財産を国の不利益に処分した行為(滞納法人が所有する自動車等を不当に低額で売却)について、国税徴収法違反(滞納処分免脱罪)により告発した事例。
① 国税当局(徴収職員)は、滞納法人の代表者に対し、納付がない場合は財産を差し押さえることを予告した。
② 代表者は、代表者が実質的経営者である関連法人に対し、滞納法人が所有する自動車12台等(時価4220万円相当)を代金300万円で売却した。
③ 国税当局は、上記②の行為は滞納法人に対する滞納処分の執行を免れる目的でされた、国に不利益な財産の処分に該当すると判断し、代表者を国税徴収法違反(滞納処分免脱罪)で告発した。