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悪質滞納事案に139件の原告訴訟を提起

2024/09/06

 国税庁では、通常の滞納整理の手法では処理進展が図られない事案に対し、詐害行為取消訴訟等を提起するなど、訴訟手法を活用した滞納整理にも取り組んでいる。国税庁が公表した「令和5年度租税滞納状況の概要」によると、令和5年度には139件の原告訴訟を提起している。

 例えば、滞納法人から代表者への不動産売却が債権者を害する行為に該当するとして、詐害行為取消訴訟を提起した事例。

①滞納法人の代表者であるAは、滞納法人に対して貸付金を有していた。
②滞納法人は、所有する唯一の財産である不動産をAに売却し、その売却代金とAからの借入金とを相殺した。
③ 国は、当該不動産売却が、債権者(国)を害する行為(不動産の金銭への換価により隠匿等の処分をするおそれを現に生じさせる行為)であるとして、詐害行為取消訴訟を提起した。その後、国の主張を認容する判決がなされた結果、滞納法人から滞納国税全額の自主納付があった。

 また、国税庁では、海外への財産の移転などによる国際的な滞納事案に対して、租税条約に基づく徴収共助の要請を確実に行うなど、国際徴収に積極的に取り組んでいる。

 令和5事務年度に日本から徴収共助を要請した件数は11件(累計109件)だった。令和5事務年度に外国の税務当局から徴収共助の要請を受けた件数は3件(累計24件)となっている(「徴収共助」とは、執行管轄権という制約がある中で、各国の税務当局が、相互主義の下、条約相手国の租税債権を徴収する枠組み)。

 そのほか、財産の隠蔽等により国税の徴収を免れようとする悪質な事案に対しては、滞納処分免脱罪の告発を行うなど、特に厳正に対処しており、令和5年度においては8件(16人(社))の事案を告発した。

 例えば、滞納処分の執行を免れるため、取引先に対し、工事代金等を代表者の息子等名義の預金口座に振込入金させて財産を隠蔽した行為について、国税徴収法違反(滞納処分免脱罪)により告発した事例。

①滞納法人の取締役(代表者の妻)は、国税当局(徴収職員)に対し、滞納法人は廃業したと虚偽の説明を行った。
②代表者と取締役は、共謀し、滞納法人の取引先に依頼して、滞納法人の工事代金等を両者の息子等の名義の預金口座に振り込ませた。
③国税当局は、上記②の行為が滞納法人に対する滞納処分の執行を免れる目的でされた財産の隠蔽に該当すると判断し、滞納法人、代表者及び取締役を国税徴収法違反(滞納処分免脱罪)で告発した。

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