日本居住者の金融口座情報252万件を95カ国・地域から受領
2024/02/14
国税庁はこのほど、令和4事務年度における租税条約等に基づく情報交換事績の概要を公表した。
租税条約等に基づく情報交換には、「自動的情報交換」、「自発的情報交換」「要請に基づく情報交換」の3つの類型があり、今回で5回目となる金融口座情報(CRS情報)の「自動的情報交換」では、日本の居住者に係る金融口座情報252万6181件(前事務年度:250万664件)、口座残高16兆4000億円を95カ国・地域の外国税務当局から受領した一方、日本の非居住者に係る金融口座情報53万2037件、口座残高5兆1000億円を国税庁から78カ国・地域に提供した。
CRS 情報の自動的情報交換の活用例として、次の内容が紹介されている。
【CRS 情報の自動的情報交換の活用例】
・受領した CRS 情報から、複数の国内外法人の役員を務める個人Aが、X国にある金融口座に多額の資金を保有していることを把握。口座残高が前年から大幅に増加しており、申告に反映されていない収入があることが想定されたため、調査に着手した。調査において、当該口座の資金原資の解明を行った結果、個人Aが利子・配当等を含む多額の投資所得を得ていた事実を把握した。
CbCR(Country by Country Report:国別報告書)の自動的情報交換では、外国に最終親会社等がある2237グループのCbCRを53カ国・地域の外国税務当局から受領し、日本に最終親会社等がある866グループのCbCRを国税庁から61カ国・地域に提供した。
法定調書により把握した非居住者等への支払についての情報7万7103件を外国税務当局から受領した一方、75万791件を外国税務当局に提供した。
次に、「自発的情報交換」は、国際協力の観点から自国の納税者に対する調査などの際に入手した情報で外国税務当局にとって有益と認められる情報を自発的に提供するもの。外国税務当局から国税庁に提供された「自発的情報交換」の件数は812件。国税庁から外国税務当局に提供した「自発的情報交換」の件数は131件だった。地域別にみると、アジア・大洋州の国・地域への提供が61件と最も多くなっている。
最後に、国税庁から外国税務当局に行った「要請に基づく情報交換」の件数は641件となり、前事務年度より2件増加した。地域別にみると、日本と経済的関係が強いアジア・大洋州の国・地域向けの要請が515件となり、約8割を占めている。外国税務当局から国税庁に寄せられた「要請に基づく情報交換」の件数は252件で、前事務年度から124件増加した。
要請に基づく情報交換の活用例では、次の内容が紹介されている。
【外国税務当局から受領した情報の活用例】
・内国法人Aは、日本国内で日用雑貨品を仕入れ、X国の外国法人B等に輸出したとして、当該国内仕入に係る消費税に関して、還付申告書を提出していた。内国法人Aの調査においては、外国法人B等への輸出取引を証する資料が提出されなかったことから、当該取引の適否を検討するため、X国の税務当局に対して、内国法人Aとの取引を記帳した外国法人B等の会計帳簿等について情報提供の要請を実施した。当該要請に対し、X国の税務当局から、外国法人B等は内国法人Aと取引を行っていない旨の回答があり、架空の輸出取引を利用して不正に消費税の還付申告を行っていた事実を把握した。