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ふるさと納税訴訟 泉佐野市が逆転勝訴 裁判官「居心地の悪さを覚えた」

2020/07/21

 ふるさと納税制度から除外されたのは違法だとして、大阪・泉佐野市が国を訴えた裁判で、最高裁は6月30日、国側の勝訴とした大阪高裁の判決を破棄。宮崎裕子裁判長は、国の除外決定を「違法」として取り消し、泉佐野市の逆転勝訴が確定した。

 ふるさと納税については、一部の自治体で高額・高級すぎるものが見られるなど、自治体間の競争が過熱していることを受け、総務省は各自治体に対して通知を発出し、返礼割合を3割以下とし、返戻品は原則地場産品とするように要請していた。

 泉佐野市では、総務省からふるさと納税における返礼品の再三の是正要請を受けていたが、2018年度のふるさと納税においてもアマゾンギフト券を返戻品としたキャンペーンで注目され、受入額(寄付額)は497億5300万円と市町村別でダントツだった。

 総務省は、ふるさと納税の新制度開始前に大阪府泉佐野市の募集方法を問題視して除外することを決めたが、国の第三者機関である「国地方係争処理委員会」が、違法の可能性を指摘。総務省の対応が注目されたが、総務省は同委員会に対して泉佐野市を除外した決定を維持すると通知した。

 これに泉佐野市は、改正規定の施行前の行いを理由に除外するのは違法だとして処分の取り消しを求める裁判を起こしたが、大阪高裁に退けられ、争いの舞台は最高裁へと移った。

 最高裁は、「キャンペーンと称し、従来の返礼品に加えてアマゾンギフト券を交付するとして、返礼品を強調した寄附金の募集をエスカレートさせたものであり、社会通念上節度を欠いていたと評価されてもやむを得ない」とした上で、「従前は返礼品の提供について特に定める法令上の規制が存在しなかった」、「改正規定の施行後においても同市が同様の態様により返礼品等の提供を継続するものとは推認することができない」などとして、「原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある」と判断。裁判官全員一致の意見で泉佐野市の逆転勝訴を言い渡した。

 だが、裁判官の補足意見として、泉佐野市の勝訴に「居心地の悪さを覚えた」と指摘。その原因は、「総務大臣からの再三の技術的な助言に他の地方団体がおおむね従っている中で推し進めた結果、集中的に多額の寄付金を受領していたことにある」とし、特に、改正法の成立後にも返礼割合を高めて募集を加速したことには「眉をひそめざるを得ない」という意見を示したが、結論として「法的には法廷意見のとおりと考えざるを得ない」とした。

 最高裁の判決を受けて、総務省は7月3日、泉佐野市とともに和歌山県高野町、佐賀県みやき町をふるさと納税の対象となる団体として指定した。指定対象期間は、令和元年6月1日から令和2年9月30日まで。なお、同様に除外決定を受けていた静岡県小山町については、地場産品基準違反についても不指定の理由とされていたため、高市総務相は「小山町から返礼品を見直す旨の申し出があれば、指定する方向で対応する」としている。

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