事業承継税制 特例承継計画や認定支援機関のマニュアル公表①
2018/05/29
中小企業庁はこのほど、同庁のホームページ上で、「特例承継計画に関する指導及び助言を行う機関における事務について」と題したマニュアルを公表した。
平成30 年度税制改正により、事業承継における相続税・贈与税の負担を軽減する事業承継税制の内容を拡充した期限付の特例措置が創設された。特例措置を受ける場合は、特例承継計画について認定経営革新等支援機関(以下、認定支援機関)による指導・助言を受ける必要があるほか、一定期間内に従業員数が事業承継時の80%を下回った場合には、実績報告に加え、認定支援機関による指導・助言を受ける必要がある。
そこで、今回のマニュアルでは、認定支援機関における特例承継計画に係る事務のガイドラインが示されている。
それによると、中小企業者が経営承継円滑化法の認定を受けるためには、「特例承継計画」を都道府県に提出し、確認を受ける必要がある(提出できる期間は、平成30年4月1日から平成35年3月31日まで)。特例承継計画の記載事項は、後継者の氏名や事業承継の時期、承継時までの経営の見通しや承継後の5年間の事業計画等に加え、認定支援機関による指導及び助言等の内容となっている。
承継後の5年間の経営計画については、特例後継者が実際に事業承継を行った後の5年間で、どのような経営を行っていく予定か、具体的な取組内容を記載する。なお、事業計画は必ずしも設備投資・新事業展開や、売上目標・利益目標についての記載を求めるものではなく、マニュアルでは、「後継者が、先代経営者と認定支援機関とよく相談の上、後継者が事業の持続・発展に必要と考える内容を自由に記載してください」としている。ただし、5年間の経営計画は、すべての取組みが新しい取組みである必要はないが、各年において取組みが記載されている必要があるので注意したい。
記載例のクリーニング業では、5年間の経営計画が次のようにまとめられている。
【1年目】郊外店において、コート・ふとん類に対するサービスを強化し、その内容を記載した看板の設置等、広告活動を行う。
【2年目】新サービスであるクリーニング後、最大半年間(又は一年間)の預かりサービス開始に向けた倉庫等の手配をする。
【3年目】クリーニング後、最大半年間(又は一年間)の預かりサービス開始。(預かり期間は、競合他店舗の状況を見て判断)
【4年目】「駅前店の改装工事。リニューアルオープン時に向けた新サービスの開始」
【5年目】「オリンピック後における市場(特に土地)の状況を踏まえながら、新事業展開(コインランドリー事業)又は新店舗展開による売り上げ向上を目指す。
こうした特例承継計画について認定支援機関は、事業承継を行う時期や準備状況、事業承継時までの経営上の課題、その対処方針、事業承継後の事業計画の実現性などについて指導・助言を行い、その内容を記載する。マニュアルでは、「なぜその取組みを行うのか」、「その取組みの結果、どのような効果が期待されるのか」が記載されているかを確認するよう求めている。
先ほどのクリーニング業では、次のような指導・助言の記載例が載っている。
・売上の7割を占める駅前店の改装工事に向け、郊外店の売上増加施策が必要。競合他店が行っている預かりサービスを行うことにより、負の差別化の解消を図るように指導。
・駅前店においても、改装工事後に新サービスが導入できないか引き続き検討。サービス内容によっては、改装工事自体の内容にも影響を与えるため、2年以内に結論を出すように助言。
・また、改装工事に向けた資金計画について、今からメインバンクである●●銀行にも相談するようにしている。
・なお、土地が高いため株価が高く、一郎・二郎以外の推定相続人に対する遺留分侵害の恐れもあるため「遺留分に関する民法の特例」を紹介。
なお、マニュアルでは、次のことを注意点として挙げている。①特例後継者が事業承継税制の適用を受けた後は、特例後継者を変更することができない(ただし、特例後継者を二人または3人記載した場合で、また株の贈与・相続を受けていない者がいる場合は、当該特例後継者に限って変更することが可能)。②特例後継者として特例承認計画に記載されていない者は、経営承継円滑化法の特例の認定を受けることはできない。③事業承継後5年間の事業計画を変更した場合(より詳細な計画を策定する場合を含む)も、計画の変更の手続きを行うことができる。特に、当初の計画段階で具体的な内容が記載されていなかった場合は、認定支援機関の指導・助言を受けた上で、それを具体化するための計画の変更の手続きを行うことが求められる。