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国税犯則調査手続 見直しが必要と考えられる事項を整理

2016/11/18

 政府税制調査会の「国税犯則調査手続の見直しに関する会合」が10月31日と11月9日の2回にわたり開催された。この会合では、国税犯則調査手続について、刑事訴訟法や関税法ならびに税務手続全般に知見を有する外部有識者から意見を聞き、情報処理の高度化等に対応するために見直しが必要と考えられる事項が整理されている。このほど、内閣府ホームページに整理したものが公表されたので、主なものを取り上げてみる。

①電磁的記録に係る記録媒体の差押えの執行方法
 
国税犯則調査において電磁的記録を取得する場合、電磁的記録が保存された記録媒体を差し押さえる必要があるが、差押えを受ける者の業務に著しい支障を生じさせるおそれがある場合や、無関係な第三者の電磁的記録が多数記録されている場合など、記録媒体自体の差押えを回避すべき事情が存する場合もある。

 また、相手方の任意の協力を得て、必要な電磁的記録を他の記録媒体に複写又は印刷してもらい、それらを差し押さえる方法を採ることもあるが、これは相手方の任意の協力が前提であり、相手方が非協力的な場合には機能しない。
 こうした現状を踏まえると、適時・的確な証拠収集を可能とするとともに、差押えを受ける者の業務負担の軽減や第三者の個人情報への配慮の観点から、国税犯則調査についても、刑事訴訟法第110条の2にならい、電磁的記録に係る記録媒体の差押えの執行方法に係る規定を整備すべきと考えられる。

②接続サーバ保管の自己作成データ等の差押え
 
国税犯則調査において、ネットワークで接続している外部の記録媒体(サーバ等)に保存された電磁的記録を取得する場合、パソコン自体を差し押さえる方法のみでは当該電磁的記録を取得することができないため、差押えを受ける者の任意の協力を前提として、電磁的記録をパソコンやその他の記録媒体に複写するよう求めているが、相手方が非協力的な場合には、この方法は機能しない。

 この場合、外部の記録媒体を対象として差押え等を行うことは可能である。しかし、強制調査着手前に外部の記録媒体を用いている事実が判明しているとは限らず、むしろ強制調査着手後に初めて外部の記録媒体を用いている事実が判明することも稀ではないところ、このような事例で、強制調査着手後に改めて裁判官の許可状を得て外部の記録媒体を対象とする差押えを行おうとしても、犯則嫌疑者等による時間差を利用した証拠隠滅行為を誘発する危険が大きい。
 こうした現状を踏まえると、適時・的確な証拠収集を可能とする観点から、国税犯則調査についても、刑事訴訟法第99条第2項・第218条第2項にならい、接続サーバ保管の自己作成データ等の差押えに係る規定を整備すべきと考えられる。

③郵便物等の差押え
 
通信事務取扱者が保有する郵便物等は、犯則事件の立証のために重要な証拠となり得るが、関税法のような規定を欠いており、国税犯則調査では郵便物等の差押えを行っていない。

 そのため、的確な証拠収集を可能とする観点から、関税法第122条にならい、通信事務取扱者の保管する郵便物等の差押えに係る規定を整備するとともに、通信当事者に対する通知の規定も設けるべきと考えられる。

④強制調査の夜間執行
 
日没から日の出までの間は強制調査の手続を開始することができない。このため、日没前に新たに強制調査を実施すべき箇所を把握したものの許可状執行が日没までに間に合わない場合や、日没後に新たに強制調査を実施すべき箇所が把握された場合などは、翌日の日の出まで手続開始を待たざるを得ないケースがある。

 適時・的確な証拠収集を可能とする観点から、関税法第124条にならい、強制調査の夜間執行に係る制限を緩和するよう規定を見直すべきと考えられる。

 「国税犯則手続の見直しについて」はこちら

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