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平成30年度税制改正大綱のチェックポイント ~個人所得課税~

2018/01/26

〈給与所得控除・公的年金控除から基礎控除への振替等〉
 政府税制調査会では、給与所得控除・公的年金控除について様々な議論がありましたが、平成29年12月22日に公表された平成30年度税制改正の大綱では、給与所得者などの特定の働き方だけでなく、様々な形で働く者(フリーランス・起業・在宅で仕事を請け負う子育て中の女性など)をあまねく応援するため、給与所得控除及び公的年金等控除の控除額を一律10万円引き下げ、その引き下げる10万円を基礎控除に振り替えて、基礎控除額が一律10万円引き上げられることになりました。


 また、給与所得控除額の上限となる給与収入を850万円に引き下げ、給与収入が850万円を超える場合の控除額が195万円に引き下げられます。ただし、子育てや介護に配慮する観点から、23歳未満の扶養親族や特別障害者である扶養親族を有する者などに負担増が生じないような措置が講じられます。

 給与所得控除の見直しに伴い、特定支出控除の範囲について、「職務上の旅費」が追加されるとともに、「帰宅旅費」の限度回数(月4回)が撤廃されます。

 公的年金等控除は、年金以外の所得がいくら多くても、年金のみで暮らす者と同じ控除が受けられる仕組みが改められ、公的年金等収入が1,000万円を超える場合の控除額に上限(195.5万円)が設けられます。さらに、公的年金等以外の所得金額が1,000万円超の場合は控除額が引き下げられることになりました。

 基礎控除については、生活保障的な意味合いから設けられていましたが、所得が多いほど税負担の軽減額が大きいことから、生活に十分余裕のある高所得者には措置不要との考え方に基づき、特に高額の所得といえる合計所得金額2,400万円超で控除額の逓減が開始し、2,500万円超で消失する仕組みに改められます。

 なお、基礎控除の引上げ及び給与所得控除の引下げにともない、基礎控除及び給与所得控除の金額を踏まえて設定されている税制上の金額基準(配偶者控除・扶養控除・青色申告特別控除等)について、必要な調整が行われます。

 上記の改正は、いずれも平成32年1月から施行されますが、影響を受ける対象者が広範であることから、先生方から顧問先などへ早めに情報提供すべきでしょう。

NISAの見直し〉
 NISAは、制度開始から着実に普及していますが、口座開設以降一度も買付けが行われていない口座が相当数あり、その理由の一つとして、投資家がNISA開設を申し込んだ日には買付けができないことが挙げられていることから、今回の改正で、NISA口座を開設した当日に買付けることを可能とする見直しが行われます。

 そのほか、非課税期間が終了したNISA口座内で保管する商品について、同金融機関に特定口座が開設されていれば、特段の手続きを経ずにその特定口座に移管されるようになります。

〈土地・住宅税制〉
 土地・住宅税制については、平成29年度末で適用期限が到来した、次の特例の適用期限が2年延長されます(平成30年1月1日から平成31年12月31日まで)。

・居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算等の適用期限の延長
・特定の居住用財産の譲渡損失の損益通算等の適用期限の延長
・特定の居住用財産の買換え等の場合の長期譲渡所得の課税の特例の適用期限の延長

 なお、特定の居住用財産の買換え等の場合の長期譲渡所得の課税の特例は、買換資産の範囲に一定の非耐火既存住宅が追加されます。

〈森林環境税(仮称)等の創設〉
 森林吸収源対策に係る地方財源を確保するため、平成31年度税制改正において、森林環境税(仮称)及び森林環境譲与税(仮称)が創設されますが、森林環境税の税率は年額1,000円とされ、平成36年度から課税されます。

 解説/中島孝一 税理士

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