10月スタート!持分なし医療法人への移行計画の新認定制度
2017/08/31
「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律」の一部改正により、「持ち分あり医療法人」から「持ち分なし医療法人」への移行計画の認定制度において、認定要件の追加等の新しい規定が今年10月1日から施行される。
「持分あり医療法人」から「持分なし医療法人」への移行を促進させるため、平成26年度税制改正によって「医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予等の特例措置」が創設された。これは、平成26年10月から平成29年9月30日の間に、「持分なし医療法人」への移行計画について厚生労働大臣から認定を受けた場合、その認定医療法人が「持分なし医療法人」へ移行する期間に発生する相続税・贈与税を猶予し、移行後にその猶予税額を免除するというもの。
しかし、相続税法により相続税等が「不当に減少」する場合は、医療法人を個人とみなして贈与税が課税される扱いとなっており、これがネックとなって「持分なし医療法人」への移行はほとんど進んでいない実情があった。贈与税課税に該当するか否かは、非課税基準による税務署の個別判断に委ねられていた。非課税基準の主な要件とは、理事6人・監事2人以上、役員の親族1/3以下、医療機関名の医療計画への記載などで、小規模の医療法人にとってはハードルが高いものだった。
そこで、平成29年度税制改正では、①新しい認定要件をクリアした認定医療法人は、移行期限までに「持ち分なし医療法人」に移行した場合は贈与税を課さない、②移行後6年間は認定要件を維持し、その間に認定要件に該当しなくなった場合は経済的利益に対して贈与税を課す、③納税猶予の特例措置を3年延長する、こととされた。
新しい認定要件には、従来の認定要件である「社員総会の議決があること」、「移行計画が有効かつ適正であること」、「移行計画期間が3年以内であること」のほかに、運営に関する適正性要件が8つ追加されている。例えば、法人関係者に特別な利益供与をしないこと、役員報酬について不当に高額にならないように定めていること、社会保険診療に係る収入が全体の80%以上、といった要件を厚生労働省が審査する。
厚生労働省では、「今回の改正により、役員数や役員の親族要件、医療計画への記載等の要件を緩和したことで、贈与税の非課税対象が大幅に拡大する」としているが、実際に移行件数がどれだけ伸びるかが注目されるところだ。
なお、厚生労働省では、持分なし医療法人への移行促進策に関して9月12日までパブリックコメントを募集している。詳しくはこちら。