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最高裁 組織再編の行為計算否認規定 上告棄却で当局の適用認める

2021/06/28

 上場企業の会社が、完全子会社を被合併法人とする適格合併を行い、消滅した完全子会社の未処理欠損金を引き継いで損金算入した行為について、法人税法132条の2(組織再編成に係る行為又は計算の否認)の適用をめぐり争われていた裁判の上告および上告受理の申立に対し、最高裁は令和3115日、上告棄却・上告審として受理しない決定を下した。

 この事件は、車両部品メーカーが二輪車部品製造会社を子会社にして、特定資本関係5年を超える要件を満たした上、適格合併したことが発端。同社は、新設した二輪部品製造の別会社に被合併会社の従業員を転籍、棚卸資産を移転させるなど、事実上、特定資本関係ができた後に生じた未処理欠損金だけを引き継いだ行為に対し、税務当局が組織再編の行為計算否認を適用したことで税金紛争となった。1審、2審判決で敗訴していた車両部品メーカー側が上告・上告受理の申立をしていた。

 主な争点は、①5年超の特定資本関係がある会社間の合併の場合に、法人税法132条の2(組織再編成に係る行為又は計算の否認)の適用が認められるかどうか、②納税者が行った合併に「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められる」不当性があるかどうか。

 原審となる東京高裁は、法人税法132条の2の文言上、組織再編成に係る特定の行為又は計算を否認の対象から除外する定めはないこと、適格合併の未処理欠損金の引継ぎを認める法人税法57条で特定資本関係5年超の要件を充たせば、合併等の組織再編行為自体に租税回避等の不当性が認められる場合でも一般的な組織再編の行為計算否認規定を適用しないという趣旨が法律上、明確にされていると理解することは困難と説示した上、不当性があるとして東京地裁の同規定の適用を支持していた。

 今回、最高裁が組織再編の行為計算否認規定の適用を認めたのは2例目となる。これで司法上、未処理欠損金の引継ぎ要件を充たしていても、租税回避行為を包括的に防止する行為計算否認規定をすり抜けることはできないことが明確になったといえるだろう。

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