民法(相続関係) 配偶者保護の方策など追加試案でパブコメ
2017/08/10
法務省は8月1日から「中間試案後に追加された民法(相続関係)等の改正に関する試案(追加試案)」に関する意見募集(パブリックコメント)を開始した。
相続法制については、30年以上実質的な見直しが行われておらず、その間、高齢化社会の進展や家族の在り方に関する国民意識の変化が見られるようになった。そこで、法制審議会民法(相続関係)部会が設置され、相続法制の見直しに関する調査審議が行われてきた。
平成28年6月には中間試案が取りまとめられ、パブリックコメントを実施。それらの意見を踏まえ、同部会による調査審議が再開された。中間試案では、配偶者の相続分を一定の条件で引き上げるという考え方を提示したが、パブリックコメントではこれに反対する意見が多数を占めた。そのため、その後の審議では、配偶者の相続分の引上げに代わる別の方策を含めて検討すべきとの指摘が相次ぎ、新たな配偶者保護策などに関する方策などが提案されたことで、今回、これらの追加試案についてパブリックコメントを実施することとなった。
追加試案には、遺産分割に関する見直し等として、まず、配偶者保護のための方策が盛り込まれている。具体的には、婚姻期間が20年以上である夫婦の一方が他の一方に対し、居住用不動産の全部または一部を遺贈または贈与したときは、持戻しの免除の意思表示があったものと推定することにより、遺産分割においても、このような遺贈等をした被相続人の意思を尊重した取扱いができるようにする。すなわち、原則として当該居住用不動産の持戻し計算を不要とすることが盛り込まれた。
そのほか、「仮払い制度等の創設・要件明確化」として、相続された預貯金債権について、生活費や葬儀費用の支払、相続債務の弁済などの資金需要に対応できるよう、遺産分割前にも払戻しが受けられる制度を創設する。また、「一部分割」として、遺産の一部のみを分割することができることを明文化し、当事者が遺産の一部分割を請求できるようにする。
遺留分制度に関する見直しでは、遺留分減殺請求権の行使によって当然に物権的効果が生ずるとされている現行の規律を見直し、遺留分権の行使によって遺留分侵害額に相当する金銭債権が生ずるものとしつつ、受遺者等において、金銭の支払に代えて、受遺者等が指定する遺贈等の目的財産を給付することができるようにする。
パブリックコメントの受付は、平成29年9月22日まで。その結果を踏まえ、さらに調査審議が行われ、本年末または来年初めの要綱案の取りまとめを目指すとしている。