マンションに係る財産評価基本通達に関する第1回有識者会議を開催
2023/02/08
国税庁は1月30日、マンションに係る財産評価基本通達に関する第1回有識者会議を開催した。
令和5年度与党税制改正大綱(令和4年12月16日決定)では、「相続税におけるマンションの評価方法については、相続税法の時価主義の下、市場価格との乖離の実態を踏まえ、適正化を検討する」という内容が盛り込まれた。
実際、マンションについては「相続税評価額」と「市場売買価格(時価)」とが大きく乖離しているケースが把握されている。会合の資料によると、例えば、東京にある総階数43階、所在階数23階、築年数9年、専有面積67.17㎡のマンションは、市場価格1億1900万円に対し、相続税評価額は3720万円となっており、乖離率は3.2倍だった。
また、福岡県にある総階数9階、所在階数9階、築年数22年、専有面積78.20㎡の物件については、市場価格3500万円に対し、相続税評価額は1483万円、乖離率は2.36倍という事例も報告されている。
相続税法では、相続等により取得した財産の価額は、「当該財産の取得の時における時価(客観的な交換価値)」によるものとされており(時価主義)、その評価方法は国税庁の通達によって定められている。この評価通達に沿って評価するのが原則であるが、それが「著しく不適当」な場合に限り、評価通達6項を適用し、評価通達以外の方法で評価することになる。
ただ、評価通達6項の適用件数は年間数件程度と非常に限られており、最高裁判決でも、評価通達によらない評価とすることは合理的な理由がない限り平等原則に反するとされた。このため、マンションの市場価格と相続税評価額の乖離の実態把握とその要因分析を的確に行った上で、有識者の意見も丁寧に聴取しながら、通達改正を検討していくこととした。
今回の初会合は、国税庁がその検討に際し必要な事項について有識者から意見聴取することを目的として開催された。出席した委員からは、「価格乖離の問題は、タワーマンションだけではなくマンション全体にいえるのではないか。そうすると、時価主義の観点からは、見直しの範囲を一部のタワーマンションに限定すべきではない」、「評価方法を見直した結果、評価額が時価を超えることとならないようにする配慮が必要」、「時価と相続税評価額との価格乖離の要因分析を行うに当たり、統計的手法による分析が有用ではないか」、「足元、マンション市場は新型コロナウィルス感染症の影響により建築資材の価格が高騰していることから、いわゆるコロナ前の時期における実態も把握する必要がある」といった意見があった。
なお、国税庁は会議資料の中で、「今回の見直しは、評価額と時価の乖離を適切に是正することを目的とするものであり、一部の租税回避行為の防止のみを目的として行うものではない」としている。