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空家譲渡の3000万円控除の要件緩和 買主側による家屋の取り壊しもOK 国交省が契約書の文例示す

2023/11/09

 国土交通省は、空き家特例(措置法35条3項)の適用要件が来年1月1日から緩和されることを受け、売買契約の特約の文例を公表した。

 空き家特例は、一人住まいの親が亡くなって空き家になった実家を相続した子が、その実家を売却する際に適用できる優遇税制「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」のこと。現行制度では、親から相続した空き家を譲渡するとき、売り主側で土地の上に建つ住宅を改修したり、取り壊す必要があった。この適用要件が緩和され、買主側で所定の期間内にその住宅の改修または取り壊しを行った場合でも、この特例が適用できるようになった(令和5年度税制改正・3号譲渡)。

 上記3号譲渡は、耐震基準不適合の空き家を、現状で譲渡した後、翌年2月15日までの間に次に掲げる場合に該当し、他の要件を満たせば特例適用が可能となる。

1.家屋が改修等により耐震基準に適合することになった場合 
2.家屋全部の取壊し、または除却、滅失をした場合

 特例を受けるためには、買主側で家屋の取り壊し等をしてもらうことが要件となる。そのため、買主側に対して「改修して耐震基準適合家屋とする」「家屋を取り壊す」などの実行を求める『特約』を盛り込んだ売買契約が必要となるほか、買主側が実行できなかった場合の取り決めもしておく必要があると指摘されてきた。そこで、国土交通省は今年中に契約書のひな型等を明らかにする方針を明らかにしていたが、その特約の文例がこのほど示された。

 それによると、売買契約上の特約として示されたのは、譲渡する土地に耐震基準不適合の家屋があり、買主側で①家屋を改修して耐震基準に適合させる場合、②家屋自体を取り壊す場合の2つのタイプ。国土交通省では、契約の当事者間で合意した内容に応じ、文例を適宜修正・加筆のうえ利用することを推奨している。

 このうち②取り壊すタイプの特約は次のとおりだ。


1.売主及び買主は、売主が本契約について租税特別措置法(昭和32年法律第26号)第35条第3項に定める空き家の譲渡所得の特別控除(以下「特別控除」という。)の適用を受けることを前提として、本契約の売買価格等諸条件を決定したことを互いに確認します。

2.売主及び買主は、本件土地及び建物の所有権移転後に買主が本件建物の全部の取壊し又は除却工事(以下「本工事」という。)を行うことに合意し、本工事については買主の責任と負担において、令和〇年〇月〇日までに完了させることとします。
 なお、買主は、売主が本契約について特別控除の適用を受けるために必要となる書類(以下「必要書類」という。)を取得のうえ、令和〇年〇月〇日までに売主へ交付するものとします。

3.前項のとおり買主が本工事を完了できない又は売主へ必要書類の交付をしないことにより、売主が特別控除を受けることができなかった場合、売主は買主に対し、特別控除を受けることによって本来得られた税控除額相当額の損害賠償を買主に請求することができることとします。
 ただし、買主の責めに帰することができない事由により買主が義務を履行できなかった場合は、買主は責任を負わないものとします。

 なお、空き家特例の適用に当たっては、市区村長が、国土交通省の「通知」(国住政第101号、国住備第506号)に従い、相続した空き家とその敷地等の譲渡に関する所得税・個人住民税の特例措置の適用に当たっての要件具備の確認を行い、確認書を納税者等に交付することになっている。納税者はこの確認書を確定申告書に添付する仕組みだ。

 このため、国土交通省は3号譲渡の施行に伴い、上記通知に3号譲渡に関する事項を追加し公表した。それによると、市区町村長が3号譲渡により、確認書の交付をする場合には、基本的に上記特約が記載された売買契約書の提出を求めることとしている。

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