小規模宅地等の特例適用めぐるトラブル①
2022/06/09
「被相続人と生計一」であるか? ~令和元年4月8日裁決~
被相続人が保有していた貸付事業用宅地等で、親族が貸付事業を行っているケースで、小規模宅地等の特例の適用要件のひとつである「被相続人と生計一」であるかどうかが争われた事例がある。
問題になった貸付事業用の宅地は約170㎡の土地で、被相続人である母親と納税者Aが持分2分の1ずつ保有していた。ただ、母親は、入居金や施設利用料の前払金など1500万円弱を自腹で払い、平成18年から介護サービスのある有料老人ホームに入所。Aとは同居せず、病院に入院するとき以外は外泊もなかった。その後、母親が亡くなり、Aは残りの宅地の持ち分2分の1を相続したが、この2分の1について小規模宅地等の特例を適用して申告したところ、税務署から否認されて争いとなった。
国税不服審判所は、「『生計を一にしていた』とは、同一の生活単位に属し、相助けて共同の生活を営み、あるいは日常生活の資を共通にしていたことをいい、(中略)同居していない場合には、その親族が被相続人と日常生活の資を共通にしていたと認められることを要し、そのように認められるためには、少なくとも、居住費、食費、光熱費その他日常の生活に係る費用の主要な部分を共通にしていた関係にあったことを要するものと解するのが相当」とした。
その上で審判所は、次のような事実関係を確認して請求を棄却した。
①亡くなった母親が有料老人ホームに入居後相続開始までの約9年間、Aとは同居していなかったこと
②老人ホームの入居金、施設利用費および管理共益費に充当される前払金、月額の利用料、利用料に含まれない実費負担額のすべてを母親が負担していたこと
③Aの日常の生活に係る費用の主要な部分を母親が負担していた事実も見当たらないこと