保険外交員の業務は「代理業」個人事業税の取消し求め 19人が東京都に集団提訴
2025/01/22
生命保険の外交員ら19人が、東京都の都税事務所を相手取り、個人事業税の課税取消しを求めて東京地裁に提訴していることが分かった。
提訴前に行われた行政不服審査法上の審査請求では、東京都の審査庁が令和6年2月から3月にかけて、19人すべての課税取消しの請求を棄却していた。
裁判の争点は、保険の契約を媒介等する外交員の業務に事業性があり、個人事業税の課税対象の法定業種「代理業」に該当するかどうか。
外交員らは、保険会社と雇用関係にあり、「保険会社の代理権を有せず、本件保険会社を代理して保険契約締結することはない。このことは、他の生命保険会社の営業職員と同じ」などと主張。東京都の課税庁は、同業務が『手数料、その他の名義をもってする報酬の収得を目的として一定の商人のために、平常、その営業の部類に属する取引の代理又は媒介を行う事業』とする代理業の定義に合致する。外交員らの行う業務には事業性があり、個人事業税の法定業種である代理業に該当する」と反論している。
今回の集団提訴は係争中(令和7年1月16日現在)で、裁判所の判断が注目されるところだが、これまでも個人事業税の課税を不服とした保険外交員による審査請求は散見され、都度、物議をかもしてきた。
例えば、勤務している会社から保険の外交員報酬を受け取り、事業所得1500万円余りの所得税の確定申告をした保険外交員の業務が、個人事業税の課税対象となる「代理業」に該当すると判断されたケース。保険外交員は、約60万円の個人事業税を課税されたため、東京都の都税事務所を相手取り、課税を取消すよう求めたが、請求は棄却された(平成30年6月20日裁決)。
また、物議をかもしている要因として、保険外交員が法定業種の「代理業」に認定していなかった都道府県があることも挙げられる。東京都も平成28年までは保険外交員を「代理業」に含めていなかったが、「代理業」として課税されるようになると、それを回避するために東京都から出ていく外交員もいたそうだ。
こうした状況を踏まえ、都道府県知事の集まりである「全国知事会」でも、令和6年8月、「個人事業税については、多様化する事業形態に対応して、課税の公平性を確保し、分かりやすい税制とするため、現行の課税対象業種の限定列挙方式の見直しなど、課税の仕組みを抜本的に検討すべきである」との提言を復活させている。
一方、東京都は、令和6年度東京都税制調査会報告において、独自に「IT化の進展等の時代の変化に伴い、法において想定されていなかった事業が多く発生している中で、個人事業税の対象となる十分な『事業性』が認められるにもかかわらず、法定業種に該当しないことから課税されない業種があり、課税の公平という観点から問題が生じている」と指摘。課税対象事業の限定列挙方式を廃止し、事業性を有するすべての事業を課税対象とする提言を再登場させており、個人事業税をめぐる今後の動きが注目される。