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税務の勘所Vital Point of Tax

親から子が使用貸借で土地を借り駐車場業すると収益は誰のもの?

2022/02/15

 子2人が親から使用貸借で土地を借りて駐車場を営んでいたが、その収益は土地を保有する親のものか、それとも子のものかで争われた事件が大阪地裁であった(令和3年4月22日)。裁判所は、使用貸借でも使用収益権のある子に所得が帰属すると判断。親に帰属するとした国側は控訴している。

 判決によると、税務署の処分に至る事実の概要は次のとおり(所得の帰属以外の争点に係る事実関係は割愛)。

①平成26年2月、数筆の合計約3千㎡の土地を持つ親(原告)から子2人が税理士の助言により使用貸借契約を締結し、プロの不動産管理会社を通じて駐車場として賃貸した。
②親(原告)は、26年2月以降の収益について確定申告書に計上せず提出した。
③税務署は平成29年3月に駐車場の収益の帰属を親(原告)

 とする更正処分等を行った。その際、税務署側は処分の理由として概ね次のようなことを主張している。

ア、使用貸借契約自体、真正に成立した契約ではないこと
イ、使用貸借契約に「特別の事情」が認められるため、当事者の選択した法形式に拘束されず、契約書記載のとおりに有効に成立していると認められないこと
ウ、資産から生じる収益は資産の真実の権利者に帰属すること

 ここでいう「特別の事情」とは、「使用貸借契約書等の作成目的は,本件各土地の権利関係および利用関係を特段変更させないまま、原告の賃料収益を原告より所得の少ない子らに分散させる形にすることで原告の所得税等や地方税の軽減を図るとともに、原告の相続税対策の一環として原告が所有する不動産から生ずる賃料収益の一部を親族間で分散する形にすることにより、総体としての租税負担を軽減させることにあったというべきであること。このような目的の下、本件各土地の所有権を原告に留保したまま、その使用収益権のみを相応の対価を発生させることなく一見他に移転したかのように装う方法として子らの本件各土地の使用貸借(中略)という形式が採られたものと認められる」ことを指す。

 これに対して大阪地裁は、事実関係の精査からアの使用貸借契約は真正に成立しているとした上で、イの「特別の事情」について次のとおり指摘、税務署の主張を論破した。

A.駐車場収入が本件各土地の所有者ではない子らに帰属するからといって取引が社会通念に照らして異常なものであるということはできない。
B.原告および子らの取引を行う目的として原告および子らが支払う租税の合計額を軽減させることにあったことは認められるものの、このような目的があったことと、本件各使用貸借契約の内容どおりの行為がされたこととは両立し得るというべきである。

 そして大阪地裁は、所得税法12条実質所得者課税の原則との関係について、「資産から生ずる収益を享受する者が誰であるかは、その収益の基因となる資産の真実の権利者が誰であるかにより判定すべきであるが、それが明らかでない場合には、その資産の名義者が真実の権利者であるものと推定する」との所得税基本通達12-1に沿えば、本件は「明らかでない場合に当たらない」と判断、駐車場収入が原告にあるということができないとしている。今後の上級審の判断が注目される。

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