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税務の勘所Vital Point of Tax

土地建物「まとめていくら」で売買 償却費増狙いの価額按分を否認

2020/12/24

 土地建物を「まとめていくら」で契約して売買が行われることがある。その際、建物が古くてそれほど価値がなくても、買主側が減価償却費を多く計上するため、建物の金額が高くなるように操作するケースが見られるが、こうした動きに税務当局が「待った」をかけたことで争われていた裁判の判決が、大阪地裁であった(令和2年3月12日)。

 問題になった契約は、原告である不動産会社が平成27年8月に2階建て商業用、建築後33年経った建物を借地権付で2 億7500万円で譲り受けるというものだ。事実上の内訳は、路線価から算出した借地権価額が5600万円、購入代金から借地権価額を引いた2億1900万円(消費税等約1622万円)が建物の金額だ。

 建物は古いが立地が良かったので、買主の不動産会社は高い収益性を建物価額に反映させており、建物の税抜き価額をもとに精算分の固定資産税と仲介手数料を借地権と建物の価額比で按分し、建物の取得価額を約2億426万円と計算。これをベースに減価償却費の計算をして法人税の申告を行った。

 しかし、大阪局管内の税務署は、ちょうど平成27年が固定資産税評価額の評価替えの年だったこともあり、土地(借地権割合を考慮)・建物の固定資産税評価額の比で代金を按分。この按分比で精算固定資産税・仲介料も按分し合算することで建物の取得価額を約2814万円と算出。原告の不動産会社による高額な建物の取得価額から計算された減価償却費を否認し、更正処分等をしたことから最終的に法廷闘争となった。

 大阪地裁は、主な争点のひとつである「本来の建物の対価は税務署が示した金額になるか」について、まず、次のように指摘した。


 「法人税法施行令54条1項1号は購入した減価償却資産の取得価額を、「当該資産の購入の代価(中略)その他当該資産の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)」(同号イ)と「当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の額」(同号ロ)の合計額とする旨規定している」。

 その上で、大阪地裁は法人税の所得金額を規定した法人税法22条も合わせて解釈し、「代金額が当該減価償却資産の適正な価額と比較して著しく不合理なものである場合にまで「当該資産の購入の代価」に当たると解するのは相当ではない」と説示。「原則として当該売買契約において定められた代金額がこれに当たると考えられるものの土地(又は借地権)と建物が一括して売買される場合において、その売買契約において定められた土地(又は借地権)と建物それぞれの価額がその客観的な価値と比較して著しく不合理なものであるといった事情があるときには,合理的な基準により算定される合理的な価額をいうと解するのが相当」とした。

 そして、「土地(借地権)の固定資産税評価額と建物の固定資産税評価額の比からすると、原告の建物価額は、借地権の経済的価値を不当に過剰に転嫁したものだから、その建物に収益性に係る経済的価値が帰属するとしても客観的価値に比べ著しく高額である」などとして、原告の建物の取得価額は「客観的な価値と比較して著しく不合理なもの」と判断。税務署の固定資産税評価額の価額比を基に土地建物の価額を按分する方法に合理性を認め、更正処分等を支持している。

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