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税務の勘所Vital Point of Tax

消費税裁判 外国人旅行客への金製品販売は名義貸しの偽装?

2019/03/04

 いよいよ消費税の税率引上げも秒読み段階。国税当局では消費税の税務調査で、申告漏れや不正に対する摘発姿勢を広報し、税率アップに備え牽制を強めている。たとえば、先ごろ公表された「平成29事務年度法人税等の調査事績の概要」によると、法人の消費税に関して実地調査を行った件数は前年対比0.9%増の約9万4千件。このうち非違があったのは、約5万5千件で前年比0.6%増加している。特に、「平成29事務年度法人税等の調査事績の概要」では、消費税還付法人への対応について特記。実地調査6721件を実施し、257億円を追徴、不正還付事案800件を摘発したと強調している。

 こうしたなか、消費税をめぐる事件もスポットを浴びるケースが増えてきた。昨年8月に新聞報道された東京都千代田区で免税店を経営するT電機事件もそのひとつ。外国人旅行客への金工芸品販売で、同社が消費税の不正還付を指摘され重加算税を含め追徴されたという事件だ(日本経済新聞平成30年8月10日)。実はこの事件、現在、東京地方裁判所で争われる事態に発展していることが分かった。

1.どんな事件か?
 事件の発端は、税務署が税務調査を行ったことから始まる。T電機は、許可を得て運営していた輸出物品販売場での金製工芸品の売上げについて、非居住者(外国人旅行客)に対する特定の物品の譲渡に係るもの(消費税法8条1項)であるとして、課税標準額に含めずに消費税および地方消費税の確定申告をしていた。インバウンド消費が依然として注目されていた平成28年4月から平成29年2月にかけて900億円もの売り上げがあったという。


 これに対し税務署は実地調査を実施。金工芸品の譲渡は外国人旅行客からの名義貸しなどによるもので、非居住者に対する譲渡とは認められないなどとして消費税等の更正処分・重加算税の賦課決定処分を行ったことから争いになった(国税不服審判所裁決・平成30年7月2日)。

 事件の核心のひとつは、外国人旅行客に対して金工芸品(皿など)を実際に引き渡すなどの実態があったかどうかという点だ。

 消費税の更正処分等が行われた当時の消費税法8条1項によると、輸出物品販売場を経営する事業者が、外為法に規定する非居住者に対し、政令で定める物品で輸出するため政令で定める方法により購入されるものの譲渡を行った場合には、当該物品の譲渡については、消費税を免除すると規定されている。いわゆる外国人旅行客などに対する国内の「免税店」の免税品販売における消費税の免税ことだ。ポイントは次の通り。

①税務署長の許可を得た店舗で
②外国人旅行客など非居住者に販売するもので、
③販売対象は次のもので事業のため購入されるものは除く。
・一般物品で5千円以上のもの(金又は白金の地金その他通常生活の用に供しないものを除く)
・通常生活の用に供する物品のうち食品類、飲料類、薬品類、化粧品類その他の消耗品で、その非居住者に対して、同一の輸出物品販売場において同一の日に譲渡するその消耗品の譲渡に係る対価の額の合計額が5千円以上50万円以下のもの
④政令で定める方法で購入されるものの譲渡であること。この主な内容は次の通り。
 
ア、外国人旅行客など非居住者から免税店の事業者が旅券などの提示を受け、輸出免税物品購入記録票をそれに貼り付け、割り印をすること
 
イ、非居住者が購入した物品を国外に持ち去る(輸出する)ことを誓約した書面(購入者誓約書等)を免税店の事業者に提出すること
 
ウ、非居住者が旅券等の写し(旅券にあってはその旅券の番号と一般物品を購入する非居住者の氏名、生年月日、性別及び国籍が印字された部分の写しをいう。)をその輸出物品販売場を経営する事業者に提出すること(その輸出物品販売場において同一の日に購入する当該一般物品に係る対価の額の合計額が百万円を超える場合)。

 T電機も、この手続きを踏んで「購入記録票」と「購入者誓約書」を作製し、旅券の番号が記載された部分と購入記録票が添付された部分の写しを電磁的記録で保管していた。

 ところが、平成28年9月に税務署が税務調査を行い、購入者誓約書に購入者として記載されていた複数の者に調査したところ、その者の供述から「金工芸品を購入したことはなく、パスポートを貸し、購入者誓約書にサインしただけ」ということが判明。

 このほか、金工芸品を購入した旅行客の旅行行程によると、購入日にT電機の免税店に来ることができない者がいたこと、免税店に旅行客をアテンドするコーディネーターの供述によると、金工芸品が旅行客に引き渡されていないこと、代金も旅行客から支払われていないことなどが明らかになってきたという。また、外国人旅行客には出国の際に税関などに「購入記録票」の提出が義務付けられているが、T電機の金工芸品販売に係る約100枚のうち、わずか10枚程度しか確認できなかったという。こうした事態を重く見た税務署は、金工芸品の譲渡は非居住者へされたものとは認められないと認定、翌年9月に更正処分等を行った。

2.審判所での争い
 T電機の経営陣は、コーディネーターや旅行客の供述は信用できないことなどから、処分を不服として審査請求に及んだ。


 しかし、国税不服審判所は、コーディネーターを介した金工芸品の引き渡しなどの事実関係を供述などと照らし合わせチェック。結局、国税不服審判所は、税務調査で判明した事実関係を追認し、問題の手続きについて、おおむね次のように総括している。

 「手続きは名義人に対する譲渡の手続きとしては極めて不自然・不合理であり、名義人に対して金工芸品が引き渡された事実はなかったことが推認される(中略)、そのような極めて不自然・不合理な譲渡の手続を行いながら、本件各コーディネーターが、名義人との間で、いつ、どのようにして金工芸品を引き渡し、売買代金を精算するのかについて、具体的な認識を有していないことからすれば、請求人としても、本件各名義人との間で金工芸品の引渡しおよび売買代金の精算が行われることを前提として本件各譲渡を行っていたものとはいえない」。

 東京地裁での審理もそろそろ本格化する見通しだ。

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