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税務の勘所Vital Point of Tax

昨年4月から運用開始 地方税の裁決データベースに注目【前編】

2017/02/14

 平成28年4月から、地方税や地方行政にかかわる「行政不服審査裁決・答申検索データベース」の運用が開始されたのはご存じだろうか? このデータベースは、新しい行政不服審査法や行政不服審査法の施行ともなう関係法律の整備等に関する法律が施行されたことによって構築されたものだ。

 行政不服審査法とは、行政庁が行う処分に対し、処分を受けた人が事実関係に誤りがあると思われる場合などに、審査請求を行い是正する手続きなどを定めた法律。地方税の賦課決定処分などに不満がある場合にも、この法律に則った手続きが進められることになっている。

 国税でいえば、国税通則法の異議申立、国税不服審判所への審査請求といった手続きと横並びになる制度だ。今回の改正は、行政処分にかかわる不服申立制度全体を見直すなかで行われており、税務関係では国税通則法のほか、地方税法の固定資産税の評価額に対する審査申出(地方税法432条)の規定についても同様な見直しが行われている。たとえば、審査請求期間は処分があったことを知った日の翌日から、3か月以内にできることとされ、改正前の60日よりもさらに長くなっている。

 こうしたなか、新たな行政不服審査法85条で、「行政庁がした裁決等の内容や(中略)不服申立ての処理状況について公表するよう努めなければならない」と規定されていることを受けて、「行政不服審査裁決・答申検索データベース」が構築され、改正行政不服審査法の施行と同時に運営が開始されることとなった。これに伴い総務省が関係各省庁や地方公共団体に対し、次のような通知を行い、協力を呼び掛けている。

・不服申立制度の運用状況について国民に対する説明責任を果たすとともに、不服申立てをしようとする者の予見可能性を高め、国民の権利利益の適切な救済に資するため、不服申立てにつき裁決等をする権限を有する行政庁は、裁決等の内容その他当該行政庁における不服申立ての処理状況についての情報の提供に努めなければならないこと。
また、総務省において、裁決等の内容についての国民への一元的な情報提供及び各行政庁の利便性の向上を図るため、「行政不服審査裁決・答申検索データベース」を構築するものとしているところ、各行政庁は、当該データベースを利活用することにより、第85条に基づく公表を行うことを検討いただきたいこと。
(「行政不服審査法及び行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の施行について(通知)、10.裁決等の内容等の公表(第85条関係)」総管管第6号平成28年1月29日ほか)

 ただ、公表するかどうかは関係各省庁や地方公共団体の判断に委ねられている。公表されるのは新たな行政不服審査法施行後に下された裁決が対象。制度の趣旨は不服申立てをしようとする国民の権利救済に役立てるため、裁決等がどのくらい公表されるようになるのか、注目されていたところだ。

 「行政不服審査裁決・答申検索データベース」の運用開始後、公表されている裁決は平成29年1月5日現在で110件。このうち税金関係は34件にのぼる。事案の内訳は、固定資産税等の賦課決定等に対するものが9件、徴収関係が15件、住民税が4件、不動産取得税が2件、自動車税が3件などとなっている。

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