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税務の勘所Vital Point of Tax

相続税の底地評価で裁決 買取業者への売買価額からの逆算認めず

2019/02/15

 貸宅地の相続税評価をめぐり、国税庁の評価は高すぎるとして、納税者が争った事例がまた明らかになった(平成30年1月4日裁決)。

 この事案は、国税庁の財産評価基本通達に基づき、納税者が更地価額の3割で評価した金額(約2億1900万円)で相続税を当初申告していたが、相続後に一括して買取業者に売却、その売買金額を基に時点修正し更正の請求をしたところ、税務署が認めなかったことで争いとなったものだ。

 問題になったのは、私道を含む貸宅地7筆約980㎡の宅地。納税者は、宅地を個別に管理して売却処分することがわずらわしいと感じ、相続当初から一括して売却することを考えていた。実際、平成26年になって買取業者に売却することを決め、ほかの買取業者からも「買付証明」をもらい、9 8 0 0万円で売却した。納税者は、この金額を基に国土交通省が公表している地価の平均変動率を用いて、相続時点の金額を逆算、払い過ぎた相続税の還付を受けようと更正の請求をしたわけだ。

 納税者はおおよそ、貸宅地を求める「需要者は底地の買取業者に限定されることも踏まえると(中略)時点修正した(中略)主張額は、本件相続開始日における本件各土地の時価を示すもの」として財産評価基本通達を適用することが著しく不適当と認められる特別の事情があると主張。

 しかし、国税不服審判所は、買取業者について次のようなことを指摘した。①借地権割合60%(底地割合40%)の地域で更地価格の10%程度で買取価格を決定していること、②買取後1年以内に4筆を借地権者に売却していること、③その時の金額は買取価格の1.5倍以上であったこと。

 こうした点を踏まえ、国税不服審判所は納税者が「借地権者と個別に交渉し売却することが不可能であったものとはいえず、(中略)その取引方法を底地の買取業者に対する一括売却に限定するような事情も認められない」、買取業者に売ったから「特定多数の当事者間での自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額を下回ることとなった」ため、時価ではないとして納税者の言い分を退けた。

 貸宅地の相続税評価にあたって「特別の事情」が認められたのは、借地権付きマンションの底地のケースがある(平成9年12月11日国税不服審判所裁決、ほか)。この事例では、区分所有の建物とともに借地権を持つ人が多いため更地に戻る可能性が著しく低いことが特別の事情として認められている。

 ただ単に価額が低いだけでは、財産評価基本通達の適用について不適当と認めてもらうのは難しいようだ。

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