税賠保険 消費税の事故が半数占める
2022/07/29
㈱日税連保険サービスが公表した「税理士職業賠償責任保険事故事例」(2020年7月1日~2021年6月30日)を見ると、消費税の事故が半数を占めており、その中でも多いのが届出書の提出を失念するケースだ。例えば、A税理士は平成28年2月に依頼者の関与を開始。担当職員は同月、平成29年3月期の設備投資(車両取得)の報告を受けたが、簡易課税は選択していないと誤認。消費税簡易課税制度選択不適用届出書を提出しなかったことで過大納付消費税額が発生した。この事故では約1270万円が保険金として支払われた。
所得税では、依頼者は母の相続により平成23年3月に不動産賃貸業を継承。B税理士は、同年分から平成30年分まで減価償却費を過少計上して所得税確定申告書を提出していた。B税理士は、令和元年分所得税確定申告業務の際、減価償却資産の未償却残高が異常に多いことから相続承継時の申告書を確認。相続人としての取得価額の計上誤りを発見し、過誤が発覚した。平成26年分から平成30年分は更正の請求が容認され、平成23年分から平成25年分までの損害賠償請求に対して約570万円の保険金が支払われた。
相続税の事故で多いのが、小規模宅地等の特例適用のミスだ。平成30年5月、相続人である依頼者の弁護士よりC税理士に相続税申告業務の依頼があり、C税理士は同年8月に申告資料を預かり、10月に電子申告で相続税申告書を提出した。令和元年5月、依頼者の弁護士より小規模宅地等の課税価格の特例適用がされていないことについての問合せをメールで受け、C税理士が申告内容を検証したところ過誤が発覚。C税理士は、税務署に相続税の更正の請求書を提出し、さらに嘆願書も提出したが認められず、依頼人から損害賠償請求を受け、約1470万円が保険金として支払われた。
贈与税では、D税理士が、依頼者から父親の不動産を自分名義にしたいという相談を受け、相続時精算課税制度による贈与の提案を行った。しかし、贈与者は贈与年の1月1日において60歳以上である必要があり、依頼者の父親は贈与時には60歳だったが、その年の1月1日時点では59歳だったことから、相続時精算課税の適用を受けることができず、D税理士は損害賠償請求を受けた。この事故では、約45万円が保険金として支払われている。
こうしたミスを防止するため、ぜひ活用したいのが「自己診断チェックリスト」だ。これは、公益財団法人日本税務研究センターの監修によるもので、ミスが生じやすい処理について担当者と確認者でダブルチェックするように作られている。
「 法人税申告 」、「 消費税申告」、「消費税選択(法人用)」、「 相続税申告 」、「 譲渡所得税(土地等・建物の譲渡)申告」の5つのチェックリストがあり、事務所内のケアレスミス防止に役立つツールとなっている。
「自己診断チェックリスト」や過去の保険事故事例は㈱日税連保険サービスのホームページに掲載されている。