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税務の勘所Vital Point of Tax

第46回日税連公開研究討論会 今年は北海道会、東北会が発表

2019/10/24

日本税理士会連合会主催、北海道税理士会、東北税理士会共催による「第46回日税連公開研究討論会」が10月11日、北海道札幌市の「ロイトン札幌」で開催された。この公開研究討論会は、会員による研究成果の発表・討論の過程を通じて、税制、税務行政および税理士業務の改善・進歩ならびに税理士の資質の向上を図るとともに、日本税理士会連合会が行う研修事業に資することを目的としたもの。今回は北海道税理士会、東北税理士会が担当会として研究成果を発表した。

 

第1部 北海道税理士会
 
「個人が負担する税等の制度についての提言」
  ~所得税と個人住民税の関係を中心に~ 

 北海道税理士会の研究テーマは、「個人が負担する税等の制度についての提言~所得税と個人住民税の関係を中心に~」。
 我が国の個人に対する課税は、国税、地方税、さらに社会保険税と多岐にわたり複雑なものとなっている。こうした点を踏まえ、北海道税理士会の研究発表チームは、過年度課税と言われる個人住民税を所得税同様の現年課税にすることをとば口とし、大きく影響する徴税コストの問題も踏まえ、納税者にとってより良いと考えられる個人への課税制度を模索。その際、「納税者からの視点」と「その納税者を補佐する立場の税理士の視点」を重視した研究成果が報告された。
 ステージでは、まず、とある役場に訪れたフリーター、年金生活者、失業者、漁師、外国人という5つのパターンを設定し、それぞれの所得税と住民税の問題点を演劇によって分かりやすく整理した。
 続いて、個人住民税の現年課税化にかかる制度設計における問題点を取り上げた。例えば、現年課税化で源泉徴収する場合はどこに納税するのか、また、年の中途で採用された者については正確に把握することが難しいこと、飲食やサービス業など雇用者の出入りの多い業種にとっては大きな負担になることなどを挙げた。
 その後、個人住民税の現年課税化の制度設計における前提条件として、源泉徴収制度の導入(所得税方式の採用)、年末調整制度の導入(一律の税率で行う)、課税ベースの統一(所得税と住民税の課税ベースを統一)、地方税共通機関の設置(事務負担の軽減)、納税地の決定時期(12月31日現在の住所地で課税)、課税自主権の確保(別途課税ができる制度を導入)を紹介した。
 最後に、ステージでは、個人住民税の現年課税化を行う場合の切替年度の税負担のあり方について「1年派」と「2年派」に分かれてディスカッションが披露された。例えば、納税者の負担について、1年派は「2年分課税した場合、納税者に過度の負担を強いることになる」と主張。これに対して2年派は、「切替年度以後に所得を生じた人の負担が1年分多くなり、課税の公平さが保たれない」と反論した。

第2部 東北税理士会
「新時代における消費税制のあり方」
~2桁税率時代を迎えて~

 
消費税の導入から 30年、2桁税率時代を迎えてその役割は一層重要となってきた。また、新時代における新分野の経済活動が活発となり、現行消費税制に与える影響が無視できないものとなってきた。

 そこで東北税理士会では、「新時代における消費税性のあり方~2桁税率時代を迎えて~」を研究テーマとして取り上げ、租税の基本原則に照らし、新時代における消費税制のあり方を税理士の視点から討論した。
 ステージでは、消費税の「過去「」現在」「未来」の3つのシチュエーションを設定し、それぞれ異なる形式で発表が行われた。まず、「過去」では、日本の消費税導入までの沿革や消費税の原点について紹介。続いて「現在」では、現行消費税制の課題とあるべき姿について「緊急討論!!どうなる消費税!?」というタイトルで①軽減税率制度とインボイス方式、②非課税制度、③事業者免税点制度と簡易課税制度について、賛成・反対両論から激論を交わし、現行制度の具体的課題を浮き彫りにした上で解決策を提言した。
 軽減税率については、一度導入された制度をすぐに廃止することは現実的ではないので、更なる税率の複数化は絶対に阻止し、軽減税率の対象範囲をこれ以上広げないように限定することを訴えた。また、インボイス制度は、時代適合性の観点・公平性の観点からも賛成とし、非課税制度については、非課税範囲をできるだけ縮小することや、課税ベースを拡大して標準税率を低く保つことを求めた。
 最後に「未来」では、新時代における消費税制の課題とあるべき姿について紹介。例えば、シェアリングエコノミーと消費税制では、消費税が課税されていない消費が拡大している点を指摘。未来への回答として、消費税の納税義務者である「事業者」の定義を明確化し、「反復」「継続」「独立」の基準を具体的に規定することや、事業者免税点の大幅な引下げ・廃止などを訴えた。
 なお、発表の終盤には、会場の参加者にスマートフォンでQRコードを読み込んでもらい、消費税制に関するアンケートを実施。その場で回答結果が表示されるという公開研において初の取り組みが披露された。

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