経営者の父が遺した連帯保証債務の取扱い
2016/07/22
<質問>
㈱A(非上場)の代表取締役であった私の父は、今年1月に死亡しました。父の後継者である私は、㈱Aの代表取締役に就任するとともに、同社の借入金に係る父の連帯保証債務を引き継ぎました。父に係る相続税の計算上、私が引き継いだ連帯保証債務はどのように取り扱われるのでしょうか?
<回答>
非上場会社の経営者の多くは、経営する会社の借入金につき連帯保証人となっています。そのため、主たる債務者である会社が借入金を弁済できない場合には、連帯保証人である経営者が代わりに借入金債務を弁済する義務(連帯保証債務)を負い、その連帯保証債務は経営者が死亡した後も、相続人が相続することになります。
ところで、相続税は、被相続人が遺した相続財産の課税価格(相続税法上の評価額)に税率を乗じて計算されますが、その課税価格の計算上、被相続人が遺した債務のうち「相続開始の際に現に存するもの」(相続税法13条1項)を控除します。この場合、控除されるべき債務は「確実と認められるものに限る」(相続税法14条1項)とされています。
確実と認められる債務とは?
被相続人の遺した連帯保証債務が相続税の債務控除の対象とされるか否かについて、相続税基本通達14-3(1)とその逐条解説は、上記の「確実と認められるもの」に該当するかどうかを基準に、次のように判断をしています。
①原則的な取扱い
連帯保証債務については、連帯保証人が将来現実に、その債務の弁済を行うか否かは不確実です。さらに、連帯保証人が主たる債務者に代わって、その債務を弁済した場合でも、連帯保証人は主たる債務者に対して返還請求権(求償権)を取得して肩代わりした金額の支払を請求することができるので、さきほどの「確実と認められる」債務には該当しません。このため、連帯保証債務は、原則として、相続税の債務控除の対象とはされません。
②特例(債務控除の対象とされる場合)
ただし、相続開始時において、主たる債務者が資力を喪失するなど、その債務を弁済することができない状態にあるため、連帯保証人がその債務を弁済しなければならず、かつ、主たる債務者に求償権を行使しても返還を受ける見込みがない場合についてまで、①の理由により連帯保証債務を債務控除の対象としないこととするのは、実情に即していません。そこで、このような場合に、主たる債務者が弁済することができない部分の金額は、その連帯保証人(被相続人)の「確実と認められる」債務に該当するものとして、相続税の債務控除の対象とされます。
(今回のアドバイザー:税理士法人タクトコンサルティング 山崎信義税理士)