遺産である建物の相続開始後の使用
2017/03/21
<質問>
母が数年前に亡くなってから、私は父とともに、父が所有する建物に家族として同居してきました。このたび父が亡くなりましたが、引き続き、遺産である建物に住み続けていたところ、兄から、私の持分を超えて建物全部を使用するのは不当利得だとして、賃料相当額の請求をされました。遺産分割協議はまだ成立していません。私は、兄に賃料相当額を払わなければならないのでしょうか。
<回答>
遺産分割終了までの間は、支払わなくてよいものと解されます。
最高裁第3 小法廷 平成8 年12 月17 日判決
「共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と右同居の相続人との間において、被相続人が死亡し相続が開始した後も、遺産分割により右建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は、引き続き右同居の相続人にこれを無償で使用させる旨の合意があったものと推認されるのであって、被相続人が死亡した場合は、この時から少なくとも遺産分割終了までの間は、被相続人の地位を承継した他の相続人等が貸し主となり、右同居の相続人を借主とする右建物の使用貸借契約関係が存続することになるものというべきである。けだし、建物が右同居の相続人の居住の場であり、同人の居住が被相続人の許諾に基づくものであったことからすると、遺産分割までは同居の相続人に建物全部の使用権原を与えて相続開始前と同一の態様における無償による使用を認めることが、被相続人及び同居の相続人の通常の意思に合致するといえるからである。」
今回のアドバイザー:内田 久美子 弁護士