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税務バトルから学ぶ 審判所の視点 ザ・ジャッジ

不動産所得に必要な経費か?請求人の費用で土地賃借人の建物撤去

2020/07/22

 不動産貸付業を営む個人事業者(子と母)の請求人らは、月額378,500円で土地をAに賃貸し、Aはその土地上に各建物を所有し、一部を5名の賃借人にそれぞれ賃貸していた。

 平成2 4年1 0月にAが死亡し、法定相続人の全員が相続放棄したことで、請求人(子)は平成25年8月、家庭裁判所に亡Aの相続財産について相続財産管理人の選任審判を申し立て、N弁護士が選任された。

 請求人らは、相続財産管理人に亡Aの未払賃料4,163,500円(11カ月分)を支払うよう催告するとともに、期限内に支払いがない場合は、土地賃貸借契約を解除する旨の意思表示を行ったが、未払賃料を支払わなかったため契約は終了した。

 請求人(母)は、平成26年9月、相続財産法人に対し、各建物を収去して土地を明け渡すことや平成24年11月から土地を明け渡すまでの賃料等を支払うことを求めるとともに、各建物の賃借人らにそれぞれの占有部分を退去するよう提訴した。裁判所は申立てを認め、土地上にある各建物を債務者(相続財産法人)の費用で収去することができる旨の授権決定をした。

 平成28年3月、請求人らが費用を負担して各建物を取り壊し、土地の明け渡しの各執行が完了。すでに請求人らは平成28年1月31日にT社との間で駐車場用地として賃貸借契約を締結しており、同年3月29日から土地の使用を開始した。この建物収去に要した費用について、請求人らは不動産所得の金額の計算上必要経費に算入して確定申告をしたところ、原処分庁は家事上の経費に該当すると判断。所得税の更正処分等を行ったことから請求人らが取消しを求めて争いとなった。

建物の収去費は請求人らが自ら負担するほかなかった

 原処分庁は、「請求人らが賃貸していた土地は、本件土地賃貸借契約が終了した以後、請求人らの不動産所得を生ずべき事業の用に供されていない。各建物も取り壊されるまで、その所有者は相続財産法人であり、請求人らが所有したり貸し付けたりしたことはないから、請求人らの不動産所得を生ずべき事業の用に供されていない資産といえる」、「請求人らが各建物収去費を支払ったのは、相続財産法人が負担すべき収去費用を立て替えたものにすぎない」などとして、所得税法第45条第1項の家事上の経費に該当するとした。

 これに対して審判所は、「請求人らは、一連の法的手続を執ることにより賃料を支払わない賃借人から本件土地の明渡しを受け、それと並行して新たな賃借人への貸付けに取り掛かり、また、この間、本件土地を賃貸業務以外の用途に転用したことをうかがわせる事情も認められないことからすれば、本件土地の貸付けに係る業務は、賃貸借契約終了後、本件各建物の収去に至るまで継続していたものと認められる」と指摘。

 加えて、「請求人らは、本件土地から収益を得る業務を遂行するには、各建物を収去する必要があり、その費用について自らが負担することを想定して法的手続を遂行し、各建物収去費を支出したところ、実際にも賃借人は無資力であり、当該支出の時点において請求または事後的に求償しても、およそ回収が見込めない状況にあったのであり、客観的にみても、各建物収去費は、請求人らにおいて自ら負担するほかなかったものと認められる」と判断。各建物収去費の支出は、請求人らの不動産所得を生ずべき業務と直接関係し、かつ、業務の遂行上必要なものであったといえるから、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することができるとした。(令和元年9月20日裁決)

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