広大地評価で納税者に軍配 当局の「路地状開発」を認めず
2016/08/01
税務署から広大地評価を否認され、国税不服審判所に判断を委ねるケースは少なくない。中でも争点になりやすいのが、区画割りする際に道路を開設する必要性の有無だ。
請求人は、相続によって取得した土地を広大地と判断して税務申告を行った。しかし、当局は土地の評価額に誤りがあるとして相続税の更正処分および過少申告加算税の賦課決定処分を行ったことから争いが勃発。異議申立ても棄却され、争いのステージは国税不服審判所へと移った。
当局の主張は次のとおりだ。
①財産評価基本通達24―4(広大地の評価)に定める「その地域」、すなわち争点となった土地が存在する地域において、本件土地を標準的な宅地の地積に基づき区画割りすると、公共公益的施設用地の負担を生じることなく、4区画に分割して路地状開発することが可能、②路地状部分の土地は道路に限らず駐車場として利用できるため、建ぺい率・容積率の算定上道路を開設するよりも有利な点がある、③周辺地域に路地状開発の事例もあり、本件土地も路地状開発が最も合理的な開発である――などとして、本件土地は広大地に該当しないと判断した。
当局の4区画に対して道路含む5区画を主張
一方、請求人は、① 相続した土地は、近隣地域の標準的な宅地の地積と比べて著しく広大で、区画割りした戸建分譲地とすることが最も有効な使用といえる。そして、この地域における行政指導に従い、最低敷地面積を80㎡程度として5区画に分割して開発すると道路の開設が必要となる、②当局が主張するように4区画に分割するとしても、この土地は県内でも有数の高級住宅地というイメージがあり、多少の潰れ地ができても、全区画が道路に接面する開発のほうが、当局が主張する有利性よりも土地の交換価値を上げるため、市場の需要の観点から見ても合理性がある、③相続が発生した5年ほど前に、隣接地が道路を開設した戸建分譲地として開発されている。この事例をみても、道路を開設することが最も経済的に合理的な開発といえる――などと広大地と判断した理由を挙げている。
評価対象地の地域内を 詳細かつ具体的に調査
両者の主張に対して審判所は、評価対象地の地域内を詳細かつ具体的に調査し、次のような判断を下している。まず、「標準的な宅地の地積」について、「本件土地が所在する地域の開発事例として、当局は一部の区画のみの面積に基づいて判定するなど、判断基準となる開発事例の選択が合理的ではなく、当局の主張は採用できない」と指摘。
また、「本件土地を開発した場合、宅地の区画として4区画または5区画に分割して開発するのが経済的に合理的だと認められる」ことを前提に、「路地状開発による事例も周辺に見られるが、これらの事例は道路を開設した開発がもとより困難な土地で、本件土地とは条件が異なる」、「評価対象地が存在する地域では、道路を開設した開発事例が路地状開発の事例より多く、本件土地の隣接地の開発も含まれている。それら路地状開発をみると、比較的小規模な土地についてのみ行われ、開発による区画数も2区画ないし3区画にとどまっており、土地の形状や公道との接続状況が本件土地と類似するケースでの路地状開発は見受けられない」として本件土地を広大地と認め、当局の処分を全部取り消している。