日税グループは、税理士先生の情報収集をお手伝いします。日税ジャーナルオンライン

MENU

税務バトルから学ぶ 審判所の視点 ザ・ジャッジ

土壌汚染の土地か否か? 浄化・改善費用相当額の控除めぐるバトル

2022/10/18

 平成28年1月に被相続人が死亡。被相続人の長男である請求人と長女のMが共同相続人として被相続人が所有していた1土地から3土地を請求人が、4土地をMが取得した(1~4土地を各土地という)。

 各土地はいずれも、①土壌汚染対策法第3条第1項本文に規定する使用が廃止された有害物質使用特定施設に係る工場または事業場の敷地であった土地ではない。②各土地の面積は、土壌汚染対策法第4条第1項本文の規定による土地の形質の変更に当たり都道府県知事に対する届出を要する規模に満たない。③各土地の土壌の特定有害物質による汚染の状況につき、土壌汚染対策法第5条第1項の規定による調査やその結果についての報告が都道府県知事から命令された事実はない。④各土地は土壌汚染対策法第6条第1項に規定する要措置区域に存しない。⑤各土地は土壌汚染対策法第11条第1項に規定する形質変更時要届出域に存しない。

 被相続人または請求人は、各土地に係る土地区画整理事業が施行された際に、土壌汚染が懸念される土砂によって埋め立てられたと想定されたことなどから、各土地の土壌汚染の状況などを把握する目的で、指定調査機関であるN社に調査を依頼したところ、各土地すべてから土壌汚染対策法所定の基準を超える特定有害物質が検出された。

 土壌汚染対策工事の見積額として、1土地および2土地の見積書には4億656万円、3土地は6750万円、4土地には1億6600万円と記載されていた(いずれも消費税等抜き)。

 国税庁が平成16年に発出した「土壌汚染地の評価等の考え方について(情報)」には、相続税等の財産評価において、土壌汚染地の評価額については、土壌汚染がないものとした場合の評価額から、土壌汚染の浄化・改善費用に相当する金額などを控除して評価する旨および控除する浄化・改善費用相当額は見積額の80%相当額とする旨、土壌汚染地について行われる措置は、法令に基づく措置命令、浄化・改善費用とその措置により生ずる使用収益制限に伴う土地の減価とのバランスを考慮し、その上でその土地について最有効使用ができる最も合理的な措置を専門家の意見をも踏まえて決めることになる旨の考え方が示されている。

 請求人は、相続した土地は土壌汚染地であるとして、土地の評価に当たり、浄化・改善費用に相当する金額を控除して相続税を申告。だが、原処分庁は、各土地は法令等により土壌汚染の除去等の措置を講ずる義務が生じておらず、各土地の価格形成に影響を及ぼすような土壌汚染は認められないから、各土地の評価に当たり、土壌汚染がないものとした場合の評価額から浄化・改善費用相当額を控除する必要はないとして更正処分等を行ったことから争いとなった。争点は、各土地の評価に当たり、浄化・改善費用相当額を控除することができるか否か。

土壌汚染の土地と認められ、掘削除去が最も合理的措置

 審判所は、「各土地は、相続開始日において、土壌汚染対策法所定の基準を超える特定有害物質を地中に含有していたことが認められ、土壌汚染のある土地と認めるのが相当であることから、各土地の評価に当たり、浄化・改善費用相当額を控除すべきである。そして、各土地およびその周辺の状況や土壌汚染の状況から、各土地について最有効使用ができる最も合理的な土壌汚染の除去等の措置は掘削除去であると認められ、請求人が主張する土壌汚染対策工事の各見積額の算定過程も浄化・改善費用の金額として相当であると認められるので、各土地の評価に当たり、土壌汚染がないものとした場合の評価額から、浄化・改善費用相当額として各見積額の80%相当額を控除して評価するのが相当である」と判断。更正処分等を全部取り消した。(令和3年12月1日裁決)

PAGE TOP