母親の相続財産か? 亡父の相続で修正申告した現金の帰属が争点に
2026/08/17
令和3年6月に請求人の母が死亡し、相続が開始した(本件相続)。共同相続人は長男J、二男K、長女である請求人の3名(本件共同相続人)。
母の夫である本件共同相続人の父は、平成28年5月に死亡。母と本件共同相続人の4名が共同で相続税を申告した。父は生前、M農業協同組合において父名義で預入れをしていたが、平成29年1月から翌年2月までの間、各口座から現金が出金された(本件出金額)。
税務署の調査担当職員は平成31年4月、亡父の相続に係る相続税の調査を実施。当初申告に含まれていなかった亡父の相続財産である貯金・現金(追加分の相続財産)などの存在を確認した。母と本件共同相続人は令和元年5月30日付で、追加分の相続財産に係る遺産分割協議書を連名で作成。また、請求人は令和元年5月31日、亡父の相続に係る相続税について、母と本件共同相続人の4名共同で、追加分の相続財産を加算した修正申告を行った。

母は令和3年6月に死亡。本件共同相続人は同年11月に遺産分割協議を行い、その場にはN税理士とその補助者などが同席。本件共同相続人は、N税理士が準備した遺産分割協議書にそれぞれ署名押印した。遺産分割協議書には、各相続人が遺産分割協議書の記載とおりに遺産を分割・取得することや、請求人が取得する財産「現金 F管理口 ○○○○円」(本件金員)が記載されていた。
請求人は、本件相続に係る相続税を法定申告期限までに申告した。これに対し、原処分庁の調査担当職員は本件相続税に係る調査を実施。請求人は調査の指摘を受けて令和5年12月、修正申告書を提出した。原処分庁は、本件相続税の計算において本件金員が請求人の課税価格に算入されていないとして、更正処分および過少申告加算税の賦課決定処分をした。請求人はこれを不服として審査請求した。争点は、本件金員は、母の相続(本件相続)に係る相続財産に該当するか否か。
父の相続税の修正申告後に納税・残余財産の清算完了
請求人は、「本件出金額は、そもそも亡父が母名義で貯蓄していた名義預金であり、亡父の相続に係る相続財産だった」、「本件出金額は、亡父の相続に係る当初申告では相続財産として計上されていなかったが、本件出金額を含む追加分の相続財産について亡父の相続財産に追加して遺産分割協議書を作成した上で、亡父の相続に係る修正申告をした」などと主張。
一方、原処分庁は、「請求人の母の相続に係る遺産分割協議書に相続財産として記載された現金(本件金員)は、請求人が管理・所有し、遺産分割協議書の記載のとおり請求人が本件相続により取得したものと認められるから、本件相続に係る相続財産に該当する」などとした。
これに対して審判所は、「本件金員の原資は本件被相続人(母)名義の口座の各貯金であるところ、当該各貯金は、以前に行われた請求人の父の相続に係る相続税の調査において、亡父相続に係る相続財産として当該相続税に係る修正申告の対象とされたもので、当該各貯金が現金出金された後、本件被相続人および本件相続に係る共同相続人は、当該修正申告に伴う納税や残余財産の清算を協議し、その協議に沿って納税や残余財産の清算が行われたことが認められる。このような客観的状況を踏まえると、請求人が本件金員を本件相続により取得したものとは認められないから、本件金員は、本件相続に係る相続財産に該当しない」と判断。原処分の全部を取り消した(令和7年6月17日裁決)。
