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税務バトルから学ぶ 審判所の視点 ザ・ジャッジ

意図した申告漏れか? 保険会社からの一時金等を申告しなかった理由

2023/07/21

 年金受給者の請求人は、各保険会社との間で、保険契約者および被保険者を請求人とする保険契約を締結し、各保険契約に基づく一時金および定期支払金(以下、本件一時金等)を請求人名義の普通預金口座への振込みにより受領した。

 各保険会社は請求人に対し、本件一時金等は所得税の課税対象となることを記載した書面を送付した。

 令和元年8月、請求人は金地金の売却代金を受領。令和2年2月、税務署から送付された「令和元年分譲渡所得がある場合の確定申告のお知らせ」と題する書面を受け取った。そして、金地金の売却による利益について確定申告書を作成するため、請求人の親族に補助を依頼した。

 令和2年10月、原処分庁の調査担当職員が請求人宅に臨場し、所得税等の調査を実施。調査担当職員は本件口座の預金通帳を確認し、確定申告において本件一時金等が申告漏れとなっていることを指摘した。

 請求人は令和元年分の所得税等について、本件一時金等に係る所得を一時所得または雑所得とするなどして修正申告をした。しかし、原処分庁は、請求人が本件一時金等を申告しなかったことには隠蔽または仮装の事実が認められるとして重加算税の賦課決定処分をしたことで争いとなった。

税金の説明を受けたのは確定申告から1年以上前

 原処分庁は、「請求人は、税金に係る知識を一定程度有していた上、本件一時金等について、各保険会社から課税対象となる旨記載された本件各書面を受け取るなど、本件一時金が一時所得または雑所得として課税の対象となることを十分に認識していた」、「本件一時金等について自らの想定を超える税負担を回避するため、本件一時金等が振り込まれた預金口座の通帳を提示しなかった、本件一時金等を申告しないことを意図して、本件各書面を廃棄した」ことなどから、本件一時金等に係る所得を含めずに確定申告をしたことは、「当初から所得を過少に申告することを意図しており、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たす」と主張。

 これに対して審判所は、「請求人は、保険の取扱代理店である銀行の担当者から、一時金についての課税関係の説明を受け、支払明細等の送付を受けていたことから、本件一時金等の存在や申告の必要性を一旦認識することができたものと認められるが、過去5年間のうち一度しか所得税等の確定申告をしておらず、本件確定申告についても、金地金の売却利益について申告が必要である旨記載された税務署からのお知らせが届いたことを動機として行っており、遺族年金を含めて申告するなど、請求人に確定申告の経験や税務の知識が豊富にあったとはいえない」と指摘。

 また、「銀行の担当者からの説明は口頭で行われており、説明があったのは本件確定申告の時点から約1年以上も前で、支払明細等の送付も本件確定申告の時点から9カ月以上前であったことなどからすれば、請求人が本件確定申告の時点において、本件一時金等の存在や申告の必要性を直ちに認識していたとまではいえない」とした。

 さらに、「請求人が親族に本件通帳を提示しなかったことについては、請求人が親族に申告書の作成の補助を依頼した際のやり取りが不明であること、支払明細等を廃棄したことについても、意図的に廃棄したとは認められないことから、これらをもって、請求人が過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたとは認められない」と判断。原処分庁の重加算税の賦課決定処分を取り消した。(令和4年4月15日裁決)

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