日税グループは、税理士先生の情報収集をお手伝いします。日税ジャーナルオンライン

MENU

税務バトルから学ぶ 審判所の視点 ザ・ジャッジ

請求人の行動は『特異』か? 被相続人の残高証明書を取得しなかった理由

2023/10/27

 平成30年に被相続人が死亡。共同相続人は被相続人の妻である請求人と長男で、相続開始間もなく、2人は相続税の申告書の作成を税理士法人に依頼した。

 平成31年1月8日、請求人はB銀行〇支店の被相続人名義の預金口座、翌9日にはC銀行〇支店およびD信用金庫〇支店の被相続人名義の預金口座について、相続開始日現在の残高証明書を各金融機関から取得し、税理士法人に提出した。

 請求人は、平成31年1月8日および同月29日にPを訪れ、Q銀行の被相続人名義の貯金(本件貯金)について、Q銀行の請求人名義の〇貯金口座(請求人貯金口座)に払い戻す相続手続を行ったが、残高証明書の発行は依頼しなかった。

 本件貯金口座は平成31年2月5日に解約され、その払戻金13,331,345円は請求人貯金口座に入金された。

 請求人は相続手続に必要な書類について、B銀行○支店、C銀行〇支店、D信用金庫○支店に提出。その後、請求人は相続税の申告書を申告期限内の令和元年9月9日に提出したが、申告書などにQ銀行の貯金に係る記載はなかった。

 請求人は税務調査を受け、令和2年12月22日、本件貯金の申告漏れがあったなどとして修正申告書を提出したところ、原処分庁が重加算税の賦課決定処分をしたことで争いが起きた。争点は、請求人に通則法第68条第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったか否か。

請求人の誤解や失念で取得しなかった可能性も 

 原処分庁は、「請求人は平成31年1月8日、翌9日に相続手続を行うことなく、各金融機関から残高証明書を取得したが、本件貯金口座については1月8日およ「課税事業者選択届出書」の提出により、令和5年10月1日前から引き続き課税事業者となっている事業者は、令和5年10月1日の属する課税期間について「2割特例」を適用することはできません(平成28年改正法附則51の2①一)。

 そこで、「課税事業者選択届出書」の提出により、令和5年10月1び同月29日にPで本件貯金に係る相続手続を行い、いずれの日も残高証明書を取得しなかった。請求人は本件貯金についてのみ明らかに特異な行動をしていた」、「請求人は、税理士法人に対して本件貯金の存在を伝えなかった」などと指摘。

 一方の請求人は、「請求人がPを訪れた際、高齢であり看病疲れもあって相続に関する各種手続で頭が一杯だったところに、窓口の職員から複雑な相続手続の説明をされ、言われるがままに貯金の相続手続を行っており、自ら積極的に相続手続を行ったものではない。そして、請求人は本件貯金口座の解約により、必要な手続は完了したものと勘違いし、本件貯金口座の残高証明書を取得しなかったにすぎない。したがって、本件貯金に係る請求人の行動は特異なものではない」、「税理士法人に本件貯金の存在を伝えていないのは、申告書から漏れていることに気づかなかったからにすぎない」などと主張した。

 これに対して審判所は、「相続税の申告からあえて本件貯金のみを除外しようとする意図が請求人にあったものとは認められない上、請求人が訪れた金融機関における貯金の一般的な相続手続などからすると、請求人が誤解や失念により本件貯金の残高証明書を取得しなかった可能性も否定できないから、請求人が本件貯金についてのみ特異な行動をしたと断ずることはできず、残高証明書の発行依頼をしなかったことは故意によるものとは認めがたい」、「請求人が会計事務所に対して本件貯金の存在を故意に伝えなかったと認めることもできない」ことから、「請求人の一連の行為において当初から相続財産を過少に申告する意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたものと評価すべき事情は認められない」と判断、重加算税
の賦課決定処分を取り消した。 (令和4年5月10日裁決)

PAGE TOP