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税務バトルから学ぶ 審判所の視点 ザ・ジャッジ

滞納者の夫が妻に土地を贈与 10年後に第二次納税義務の告知が…

2016/11/25

 請求人Aは平成16年、夫から土地等の贈与を受けた。その翌年、原処分庁はF税務署長から、国税通則法第43条第3項の規定に基づき、滞納者である夫が納付すべき滞納国税について徴収の引継ぎを受けた。

 土地の贈与から10年後の平成26年、原処分庁は、本件譲渡が徴収法第39条の無償譲渡等の処分に該当するとして、同法第32条(第二次納税義務の通則)第1項の規定に基づき納付告知処分をしたところ、A氏はこれを不服として告知処分の全部の取消しを求めて争いが起きた。

 争点は、①本件告知処分が、本件譲渡について詐害の意思がないことを理由に違法となるか。②本件譲渡から約10年経過後に行われた告知処分は、第二次納税義務の制度の趣旨に反するもので徴収権の濫用として違法または不当な処分となるか。

 A氏は、「本件譲渡は、夫との離婚を考えていた自分が、離婚後の生活の糧を確保するために夫から譲り受けたもので、夫の滞納国税による差押えを免れるためにしたものではなく、国を害する意思(詐害意思)はなかったことから、徴収法第39条に規定する無償譲渡等の処分には該当しない」と主張。また、「第二次納税義務の制度趣旨は、詐害行為取消訴訟によって滞納国税の徴収を図るのみでは迅速な徴収確保が図れないことから、無償譲渡等を受けた者に第二次納税義務を直接課すことで、国税の徴収を確保することにある。本件譲渡から約10年という長期間が経過した後に行われた本件告知処分は制度趣旨に反し、徴収権の濫用として違法であり、違法でなくても不当となる」とした。

 一方の原処分庁は、「徴収法第39条の適用に当たり、滞納者による無償譲渡等の処分が『差押えを免れるためになされたこと』を要件としていない」、「第二次納税義務は、主たる納税義務が発生し存続する限り、必要に応じていつでも課せられる可能性を有し、告知はその義務の発生を知らせるためのもので、独立した期間制限は設けられておらず、納税者の国税が滞納になっている間はこの告知をすることができる」とした。

納税義務が発生し存続する限り納付告知処分はできる

 
審判所は、「徴収法第39条の規定によると、滞納者に詐害の意思のあることは第二次納税義務の成立要件ではないというべきであり、詐害の意思がないことを理由に本件告知処分が違法であるということはできない」、「確かに、第二次納税義務の制度は、民法第424条(詐害行為取消権)に規定される詐害行為の取消しという訴訟手続きに代えて、簡易迅速に租税徴収の確保を図るために設けられ、詐害行為取消制度に類似する性質がないとはいえない。しかし、第二次納税義務は、時期および対象を限定し、その効果は処分を取消すものではなく、受益者に第二次納税義務を負わせるにとどまる。しかも、その場合の第二次納税義務は告知手続によって確定するもので、訴訟手続を要しないなど、民法第424条とは明らかに異なる法律的構成となっている。民法第424条と徴収法第39条とは、その対象および効果等が異なり、それぞれ異なる適用要件等が定められていると解すべきである」と判断。

 さらに、「徴収担当職員は、再三にわたり滞納国税の納付を求めており、本件告知処分が徴収権を濫用した違法なものと評価することはできない」、「第二次納税義務は、主たる納税義務が発生し存続する限り、その納付告知処分ができると解されるのに対し、詐害行為取消権は、債権者が取消しの原因を知った時から2年間行使しないときは、時効で消滅することからすると、本件告知処分が、本件譲渡から約10年を経過した後にされたからといって、そのことのみで第二次納税義務の制度の趣旨に反するとはいえない」などとして、A氏の主張を棄却した。

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