インボイス制度の導入で免税事業者はどうなる?
2022/02/07
Q.私は地元の商店街で八百屋を営んでいる個人事業者です。年間500万円程度の売上高なので、消費税の申告をしたことはありません。
私のお店の主たるお客さんはご近所の奥様方なので、あえてインボイスの登録は必要ないと思っていたのですが、先日、商店街の会長さんが、「インボイス制度の導入により、商店街の肉屋さんや魚屋さん、ラーメン屋さんなどもすべてインボイスの登録をしなければいけないことになりそうだ」と話しているのを聞いてびっくり仰天しています。
私もインボイスの登録をして、消費税を納めなければいけないのでしょうか。
A.免税事業者はインボイスを発行することができません。よって、令和5年10月以降は、免税事業者からの仕入代金や、免税の下請業者に支払った外注費は原則として仕入税額控除の対象とすることはできないことになります。結果、免税事業者は取引先からインボイスの登録を要請されることが予想されます。ここで登録を拒否した場合には、取引の停止を通告され、取引先を登録事業者に変更されることも覚悟しなければなりません。
したがって、免税事業者は、登録の是非や登録に伴う消費税の負担額などについて、なるべく早い時期から取引先と折衝していく必要があるように思われます。
税理士の関与先で免税事業者といえば、おそらくは、個人の確定申告で、毎年1回だけ接触するような自営業者や不動産賃貸業者が大半ではないでしょうか。このような事業者は、大半がインボイス制度のことを理解していないように見受けられます。繰り返しになりますが、なるべく早い時期から取引先と価格交渉やインボイスの登録の是非について、検討するためのアドバイスをしていく必要があるように思います。
ところで、インボイスが導入されたからといって、すべての免税事業者が事業の継続に支障を来すわけではありません。お尋ねのような地元商店街の八百屋さんや魚屋さん、ラーメン屋さんなどでインボイスを要求するお客さんなどほとんどいないはずです。よって、インボイス制度が導入された後でも免税事業者のまま商売を続けていけるものと思われます。
また、仮に課税事業者との取引があったとしても、相手が簡易課税制度の適用を受けている場合には、インボイスは必要ありません。インボイスの登録申請が始まり、様々なところで誤解があるようですが、免税事業者は、まずは自分が登録が必要な事業者なのかどうかということを冷静に判断する必要があります。中途半端な風評に惑わされ、制度の内容も理解しないままに登録するようなことのないように十分に注意してください。
インボイスの登録をして適格請求書発行事業者になるということは、課税事業者を選択して納税義務者になるということです。よって、インボイスの登録をした限りはどんなに売上高が少なかろうが、取消しの届出書を提出しない限りは永久に納税義務は免除されないのです。
まずはしっかりとインボイス制度について理解することが重要です。その上で、免税事業者は、自らが登録が必要な事業者なのかどうかということを本番が始まる前に冷静に判断してください。新型コロナの影響もあるのでしょう…中小事業者において、インボイス制度に関する準備が想像以上に遅れていることが危惧されます。
インボイス制度の導入により、日本の消費税は大きな転換点を迎えます。職業会計人の皆様は、今一度、ここで事の重要性を再認識し、中小事業者の指導にご協力いただきたく、お願いする次第であります。