法人税確定申告の期限を延長 消費税の申告書提出に注意
2016/07/22
Q. 当社は3月決算法人ですが、申請により、法人税確定申告書の提出期限を6月末日まで延長しています。これにより、消費税確定申告書の提出期限についても自動的に延長されることになるのでしょうか。
A.
○ 消費税における申告期限の延長制度
法人税の世界では、会計監査などの理由により決算が確定しないため、申告書を提出期限までに提出できない事情があると認められる場合には、申請により、申告期限の延長が認められています(法法75の2)。ただし、消費税については法人税のような申告期限の延長制度はありませんので注意が必要です。たとえ決算が確定していなくとも(?)消費税の申告書は課税期間の末日の翌日から2か月以内に提出しなければなりません。
国税の申告書はたとえ1日でも提出が遅れると原則として「本税×5%」の無申告加算税が課されます。以前、関西電力が消費税の確定申告にあたり、本税は期限内に納めたものの、申告書の提出が期限後になったことから無申告加算税が12億円課されたというとんでもない事件がありました。申告書の出し忘れにだけはくれぐれもご注意ください。
○ 平成27年度改正
関西電力の事件を受け、平成18年度改正では、期限内に納付すべき税額の全額を納付し、かつ、法定申告期限から2週間以内に申告書を提出することを条件に、無申告加算税を課さないこととしました。この取扱いについて、平成27年度改正では、申告書の提出期限を2週間から1か月に延長しています(通法66⑥、通令27の2①)。
○ 個人事業者の確定申告期限
消費税の確定申告書の提出期限は、個人事業者と法人の区別なく、原則として課税期間の末日の翌日から2か月以内とされています(消法45①)。ただし、個人事業者については、所得税の確定申告期限が3月15日であることを考慮し、12月31日の属する課税期間については更に1か月延長して3月31日までに申告すればよいこととされています(措法86の4①)。
○ 課税期間の短縮制度
消費税の課税期間は、所得税および法人税の計算サイクルにあわせ、個人事業者は暦年、法人は事業年度と定められています。ただし、事業者が所定の届出書を提出した場合には、原則1年間と定められている課税期間を3か月または1か月に短縮することも認められています( 消法1 9①)。例えば、個人事業者が課税期間を3か月に短縮した場合には、1月1日~3月31日課税期間分の申告書は5月31日まで、4月1日~6月30日課税期間分の申告書は8月31日まで、7月1日~9月30日課税期間分の申告書は11月30日までに提出し、最後の10月1日~12月31日課税期間、すなわち、大晦日を含む課税期間分の申告書だけが1か月延長されて翌年3月31日となるのです。
また、消費税および地方消費税は、原則として確定申告書の提出期限までに納付することとされています(消法49)が、個人事業者で振替納税の手続きをしている場合には、毎年4月下旬に指定した金融機関から納付税額が自動引き落としとなります。ただし、法人には振替納税の制度はありません。
<プロフィール>
熊王 征秀 税理士
昭和59年学校法人大原学園に税理士科物品税法の講師として入社し、在職中に酒税法、消費税法の講座を創設。平成4年同校を退職し、会計事務所勤務。平成6年税理士登録。平成9年独立開業。東京税理士会会員相談室委員、東京税理士会調査研究部委員、日本税務会計学会委員、大原大学院大学准教授ほか。消費税関連の書籍も多数執筆。