社宅家賃と借上料を相殺 課税売上割合の計算は…?
2016/12/02
Q.当社では、マンションを一棟借り上げて従業員用社宅として利用しています。従業員から収受した社宅家賃については、監査法人の指導により社宅の借上料と相殺しています。このような経理処理をしている場合には、決算書においても社宅使用料収入は計上されません。よって、従業員から収受する社宅家賃は非課税売上高に計上せずに課税売上割合を計算してもよいでしょうか?
A.
〇社宅使用料収入の取扱い
社宅使用料収入は非課税売上高となりますので、課税売上割合の計算上、分母に計上することになります。消費税の計算は、会計処理の違いにより結果が変わるものではありません。したがって、決算で相殺処理をしている場合であっても、社宅使用料収入は非課税売上高に計上する必要があるのです。
課税売上割合が95%以上となる事業者は、従来であれば相殺処理後の決算数値で消費税の計算をしても、納付税額に影響がでることはありませんでした。しかし、平成2 3年度改正により、課税期間中の課税売上高が5 億円を超える規模の事業者は、たとえ課税売上割合が99%でも個別対応方式か一括比例配分方式によるあん分計算が義務付けられましたので、たとえわずかな非課税売上高であっても、これを分母に計上する場合としない場合では納付税額が変わってくることになるのです。
法人税においては、会計基準に従って算出された決算利益を別表四により調整し、法人税の所得金額に変形していきます。消費税計算においても、決算書の数値をそのまま用いるのではなく、必要に応じてこれをアレンジしなければならないということです。
また、消費税の計算においては、原則として相殺処理は認められません。会計処理とも連動させる必要はありませんのでご注意ください。
〇社宅の借上料の取扱い
マンションを社宅として転貸することが所有者との契約書で明らかにされている場合には、御社から従業員に対する社宅の転貸だけでなく、御社と所有者との賃貸借も住宅の貸付けに含まれて非課税となります。したがって、御社が所有者に支払う社宅の借上料は非課税仕入れとなりますので、一括比例配分方式を適用する場合や、課税売上割合が95%以上となることによる全額控除制度の適用を受ける場合であっても、絶対に仕入税額控除はできません。土地の購入費や住宅家賃などは「非課税仕入れ」であり、課税仕入れではありません。
これに対し、土地を譲渡する際に不動産業者に支払う仲介手数料や株券の売買に伴い証券会社に支払う売買委託手数料などは「非課税売上げにのみ対応する課税仕入れ」であり、その性対応方式の適用に際しては、非課税仕入高と非課税売上げにのみ対応する課税仕入高は特に意識して区分する必要があります。
〇受取利息の取扱い
銀行預金の利息からは15%の源泉税と5%の利子割が天引きされますが、利息の金額が小さい場合には、あえてこれを総額に割り戻さずに、入金額をそのまま受取利息として計上することがあります。このような処理をした場合にも、本来受取利息として計上されるべき金額が、源泉税と利子割の金額(総額の20%)だけ少なく計上され、結果、課税売上割合が過大に計算されることとなりますので注意が必要です。