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教えて熊王先生 消費税の落とし穴はココだ!税理士 熊王征秀

誤った税率のレシートを受領 仕入控除税額の計算どうなる?

2021/08/10

Q. 従業員の福利厚生用として軽減税率が適用される商品(食品:税抜価格10,000)を購入したところ、誤って標準税率(10%)が適用されたことにより、11,000(税込)で購入していたことが判明しました。仕入控除税額の計算に当たっては、販売者の適用税率に合わせ、10%の標準税率を適用してよろしいでしょうか。


A. ●正しいレシートの再交付が必要になります!


 国税庁の公表資料《事業者の皆様へ(~区分経理から消費税申告書の作成まで~)令和元年11月国税庁(令和2年1月更新)》の10頁では、「誤った税率に基づいて税込対価を計算したレシートを受領した場合には、取引先に対して「取引の事実」に基づくレシートの再交付を依頼するといった対応が必要となります。」としたうえで、適用税率の誤りによる税込対価の額の誤りについては「追記」を認めないこととしています。

 適用税率が誤っている場合には、そもそもが区分記載請求書等の記載要件を満たさないこととなるので、買い手側としてはレシートの再発行を受けない限り、仕入税額控除は認められないことになるようです。いずれにせよ、当初の支払金額と正しい金額との差額については、売り手と買い手の間で精算することになるものと思われますが、国税庁の資料には、代金の精算についてはいっさい触れられていません。

●標準税率(10%)が適用される仕入商品について、軽減税率(8%)により仕入控除税額を計算した場合

 標準税率(10%)が適用される仕入商品について、誤って軽減税率(8%)が適用されていた場合にも正しい請求書等の再発行を求める必要があります。8%税率で仕入控除税額を計算した場合、納付税額が過大になることから税務調査で否認されないと安易に考えるのは危険です。正しい税率が記載された請求書等の保存がない限り、仕入金額の全額が仕入税額控除の対象とはならないこととなりますので注意が必要です。

●適用税率の判定

 飲食料品の譲渡の判定に当たっては、販売する事業者が、人の飲用または食用に供されるものとして譲渡した場合には、顧客が飲食以外の目的で購入し、使用したとしても軽減税率の適用対象となります。よって、買い手の立場からしてみれば、その商品の税率が8%なのか10%なのかという判断は売り手の意思に委ねられているのであり、買い手の用途により勝手に決めることはできません。国税庁の軽減税率Q&A(個別事例編)の問20では、食品添加物として、食品表示法に規定する表示がされている重曹を、食用及び清掃用に使用することができるものとして販売する場合には、たとえ「清掃用に使用することができる」との表示があったとしても軽減税率を適用することとしています。

 では、食品添加物としての表示がない重曹が8%で販売されていた場合には、買い手は売り手から10%税率に基づいて計算したレシートの再交付を受け、差額の2%を追加払いしなければいけないのでしょうか…。買い手は商品を購入するたびに、容器のラベルの表示をいちいち確認する義務があるのでしょうか…。また、売り手が飲食料品と認識して販売した商品について、買い手が適用税率の変更を求めることなど現実問題としてできるのでしょうか…。このようなことを実務の現場で実行することは、事実上不可能ではないかと思われます。

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