宗教法人の土地売却代が宝飾品や怪しい団体に・・・
2017/10/11
お寺の住職さんは、他に和尚(おしょう)さんという呼び方もあります。また、宗派によっては、上人(しょうにん)さんとか、方丈(ほうじょう)さんと呼ばれることもあるようです。しかし、新聞などで取り上げられるときは、決まって住職です。
名古屋市の桃厳寺というお寺の91歳になる住職が起こした事件が連日のようにテレビや週刊誌で取り上げられたのは、2015年の12月のことでした。この寺は織田信長ゆかりの寺で、戦国時代から伝わる土地を所有していましたが、境内の整備費をねん出するために2013年に所有地の一部を2億円で売却しました。ところが、この2億円は、本来の目的に使われることなく、そのうち1億5千万円が、住職と同居していた女性の宝飾品の購入に充てられていたというのです。
名古屋国税局の調査によって、この1億5千万円は住職に対する給与と認定されたので、お寺は給与に対する源泉所得税の徴収漏れをしていたということになり、その結果、重加算税を含めて7千万円の税金を追徴されたのです。せっかく土地を売って2億円の資金を得たのに、1億5千万円失った上に7千万円の追徴ですから、桃厳寺は盗人に追い銭をするような格好になりました。
この話とはケタ違いに大きいのが、同じ名古屋市でも興正寺というお寺が2012年に土地を売却して得た138億円をめぐる事件です。興正寺は高野山真言宗の別格本山で、約2万坪の土地を隣接する中京大学に貸していましたが、この土地を138億円で中京大学に売却したのです。総本山の高野山金剛峯寺では、無断譲渡であるとして前住職を罷免して対立が続いていることに加えて、問題になったのはその資金の使途でした。
興正寺が受取った138億円のうち、保証金の返還や借入金の返済など必要な支払に使われたのは約50億円でしたが、預金口座に残っていたのは11億円余りに過ぎませんでした。
なんと約70億円もの資金が前住職と関連のあるコンサルタント会社や英国法人、芸能プロダクション、文化事業団体など怪しいところに流れていたのです。宗教法人の周りにうごめく魑魅魍魎(ちみもうりょう)の世界といえるかもしれませんが、これにメスを入れようと2017年9月には名古屋地検特捜部が強制捜査に乗り出しています。なお、これに関連して興正寺は名古屋国税局の税務調査を受け、2015年3月期までの3年間で約6億5千万円の申告漏れを指摘されています。