独立行政法人理化学研究所は公益法人!?
2019/06/25
「STAP細胞はあります」。あの小保方さんの悲痛な叫びがまだ耳の奥に残っている方も多いと思いますが、事件は2014年ですので、あれからもう5年が経つのです。事件の舞台になったのは独立行政法人理化学研究所、略して理研でした。理研はこれまでも日本の近代史の舞台にたびたび登場してきた巨大な存在です。それは、また我が国の非営利組織の歴史と重なる歩みでもあるのです。
1917年(大正6年)に、理研が設立されたときは、財団法人理化学研究所でした。当時は財団法人と社団法人の制度しかなかったのです。大学も、福祉団体も、宗教団体も、放送局も、すべて財団法人か、社団法人でした。
財団法人として発足した理研は、ビタミンB1を発見した鈴木梅太郎の研究室が開発したビタミンAを商品化して大いに儲けました。1927年(昭和2年)には、グループ会社を設立して理研で発明した工作機械、マグネシウム、ゴム、飛行機用部品、合成酒など数々の製品の事業化を積極的に進め、やがて会社数63、工場数121の理研コンツェルンを形成するまでになりました。戦前の15大財閥の一つに数えられ、戦時中は原子爆弾開発の極秘研究もしていました。
しかし、日本の敗戦によって理研の繁栄にも終止符が打たれました。1946年(昭和21年)、GHQにより理研と理研コンツェルンは解体されます。
その後しばらくは株式会社科学研究所として存続していた理研でしたが、1958年(昭和33年)に特殊法人理化学研究所として再興されます。我が国の特殊法人時代の幕開きでした。日本道路公団、石油公団など次々に特殊法人が登場しました。
しかし、特殊法人に対する風当たりが強くなった2003年(平成15年)には、独立行政法人理化学研究所となります。そして、より大きな裁量権を持つ特定国立研究開発法人とする話が進んでいましたが、STAP論文事件が起きたことによって見送られます。2015年(平成27年)には、国立研究開発法人理化学研究所に名称変更され、今日に至っています。
ところで、国立研究開発法人理化学研究所は、法人税法上はどういう扱いになるのでしょうか。法人税法別表第2に掲げられる公益法人等になります。しかし、別表第2を見ても、そこには国立研究開発法人は載っていません。なぜでしょう。国立研究開発法人は実は名称だけで、法人格としては独立行政法人に属するのです。
独立行政法人は、法人税法上は、資本金等の全部を国や地方公共団体が所有する「公共法人」に区分されるものと、それ以外の「公益法人等」に区分されるものがありますが、理研には民間の資本も入っていますので、別表第2の「公益法人等」に区分されることになります。公益法人等は、“公益法人など”ではなく、独立行政法人なども含んだ税法固有のグループであることがわかります。