トラブルは現場で起きている!

問題になっている宗教法人の売買

2026/01/20

 宗教法人の売買が問題になっています。

 約18万とされる日本全国の宗教法人の中で、代表者の不存在や礼拝施設の滅失等の理由により宗教活動を行っておらず、法人格のみ存在している、いわゆる不活動宗教法人が3,000以上あるとされていますが、これが不当に取得され、脱税やマネーロンダリング等に悪用されるおそれがあるというのです。

 宗教法人を所轄する文化庁では、「宗教法人格の不正利用について」注意喚起を促しつつ、税理士会をはじめ各士業団体に対して、その防止のための協力依頼を発出しています。

 宗教法人はそもそも会社のように売買の対象ではありません。なぜなら宗教法人には会社のように誰かが所有する仕組みがなく、したがってその所有権のようなものを他に譲渡できる仕組みになっていないからです。にもかかわらず、インターネット上に宗教法人の売買の仲介サイトが大っぴらに出ていたり、実態として宗教法人の買い手と売り手の間で売買が行われたりしています。

 それはどのような取引なのか。文化庁では「売買に類似した取引」といっていますが、買い手が宗教法人にしかるべき金額の寄附をして、そこから代表者に退職金を支払って退いてもらい、買い手が代表者に就任するという形で行われるのが典型例です。

 宗教法人には法人を所有する仕組みがないのになぜそんなことが可能なのか。宗教法人の所有は実は顕在化していないだけで、観念的に代表者の地位に含まれるものとして暗黙の了解になっているということが考えられます。もっともそれは宗教法人だけでなく、学校法人や社会福祉法人、公益法人、NPO法人などの非営利法人にも共通していえることかもしれません。

 さて、実際のところ、企業グループや医療法人グループなどがグループの中に寺院などの宗教法人を所有しているケースなども散見されます。といっても、宗教法人が節税などに活用されているというよりは、いずれなにかに使えないかと宗教法人を取得はしたものの、法に触れないように活用するとなるとなかなか使い道がないというのが実情ではないでしょうか。それもそのはずで、宗教法人は宗教活動を行うための法人ですから、それ以外の用途にはそんなに適していないからです。

 ただし、これが犯罪グループや反社会的組織の手に渡るとなると話は別です。脱税やマネーロンダリングなど違法なことを確信犯的に行うのであれば、それなりに使い道は拡がります。文化庁がこれまで不正利用の事例として挙げてきたのは、悪質な脱税のケースに限られています。

 一つは、福岡県の企画会社の前社長らが平成18年に休眠状態の宗教法人を購入し、開催したセミナーの受講料を寄附金として宗教法人の口座に振り込ませ、3年間で得た所得約27億円を隠し、約8億円を脱税したとして摘発されたケース。

もう一つは、名古屋の不動産会社社長らが平成27年に不動産の転売益約4億円を宗教法人を迂回させることで1億円を脱税したとして逮捕されたケースです。

 しかし、犯罪収益のマネーロンダリング等に不正利用されている例などはまだ表に出てきていないだけで、水面下で行われているケースも相当あるのではないでしょうか。文化庁の強い危機感を感じさせる注意喚起や各士業団体への切実な協力依頼は、そのことをうかがわせてあまりあるものがあります。

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