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トラブルは現場で起きている!

宗教ビジネス、悪貨は良貨を駆逐するか

2019/03/25

 スーパー大手のイオンでは、安上がりな“イオンのお葬式”を商品として販売しています。その中には僧侶の派遣や読経、戒名まで組み込まれており、戒名込みで4万5千円からと、さすがにスーパーならではの安売り価格で消費者の目を引き付けていますが、そこには、価格はあくまでお布施の目安だと申し訳程度に書かれています。

 同じようなポータルサイトを運営し、いわゆる料金連動型サービスシステムで葬式を受注して、その中に僧侶の派遣を組み込んでいる業者は相当数に上ります。そこで、宗教法人が、このような料金連動型サービスシステムのビジネスに組み込まれて、僧侶の派遣に応じて収入を得た場合には、どのような課税関係が生じるのでしょうか。

 宗教法人の僧侶は、日ごろ檀信徒の葬式に出仕して読経をしたり戒名を授けたりしてお布施を受け取ります。このお布施は、宗教法人の課税を受けない宗教活動収入として計上されます。これがなぜ課税を受けないかというと、宗教活動だからではもちろんありません。税法には、宗教を特別扱いしなければならない義理も道理もありません。非課税なのは、この収入は対価性がないという建前になっているからです。

 仏教に法施、財施という言葉があります。法施とは、仏の教えを説くこと。僧侶から人々に対する贈与です。財施とは、人々が金銭などの財でお返しをすること。僧侶からの法施に対する返礼です。つまり宗教の世界は法施と財施、贈与と返礼の世界であって、対価をやり取りする経済取引の世界ではないことを表しています。そこに宗教の存在意義があるわけですが、それが税法上の非課税の根拠にもなっていました。

 ところが料金連動型システムの宗教ビジネスは、完全な経済取引のビジネスモデルになっています。そこで、葬式のポータルサイトを運営する業者から紹介・委託を受けて、僧侶を派遣して宗教法人が収入を得た場合の課税関係ですが、これはサービスと対価のやり取りとして、収益事業の請負業に該当するのではないかという見方が専らです。

 少子高齢化にともなう檀信徒の減少によって宗教法人の屋台骨が揺らぎつつある中で、宗教ビジネスに侵食される宗教界の姿は、まさに悪貨は良貨を駆逐する構図を見ているようにも思われます。

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