架空の信者で宗教法人を設立してヤミ金融
2018/11/29
宗教法人の設立は、時間がかかるといわれますので、許可制度になっていると思われがちですが、実はNPO法人と同じ認証制度です。認証制度というのは、法人の設立に必要な要件や手続きが満たされているかどうかを行政機関である所轄庁が確認する制度のことです。会社や一般社団・財団法人のような準則主義と違うのは、所轄庁の確認行為が必要かどうかというところだけです。といっても、NPO法人の設立は、申請してから3か月以内に認証か不認証かを決定しなければならないと法律で定められていますので、かなりのスピード認証になっていますが、宗教法人の認証には期限が定められていませんので、相当の年月がかかることになります。
宗教法人の認証を受けるには、まず宗教団体としての過去3年間の宗教活動の実績があるかどうかです。宗教の教義があるか、信者が存在するか、礼拝施設があるか、収支や財産の実態がどうなっているかなどが所轄庁によって確認されます。宗教法人の設立が最低でも3年、長ければ10年かかるとされる所以です。
前置きが長くなりましたが、佐賀県の宗教法人が、設立に当たり架空の信者名簿を出していたことが明らかになったのは2017年11月のことでした。佐賀県伊万里市の宗教法人「至誠光魂寺(しせいこんごうじ)」ですが、この宗教法人は、融資と物品販売を組み合わせたヤミ金融で摘発され、出資法違反で代表の立石扇山ら4人が逮捕されました。融資した相手に「ネイチャーパワー」が含まれていると称する湯呑み茶碗やコーヒーカップを原価の10倍以上で買わせるなどのやり方で、5年半の間に、少なくとも42都道府県の個人や法人に10億7千万円を高金利で貸し付け、16億円を回収していました。
この宗教法人は、平成22年に過去の活動報告や信者名簿を所轄庁である佐賀県に提出して設立の認証を受けていました。ところが、名簿に記された百数十人のうち、何人かに確認してみたところ、みな「私は信者ではない」「名簿に載っていることも知らなかった」と異口同音に答えたといいます。どうやら、でっち上げの名簿を作っていたようです。所轄庁もそこまでチェックはできなかったのでしょうが、こういう宗教法人が現れると、これからの宗教法人の設立は、いっそう手間と時間がかかることになりそうです。