相次ぐ不祥事で窮地に立つ学校法人
2021/12/07
私立大学などを運営する学校法人は、理事会が最高議決機関で、評議員会はあくまで理事長の諮問機関にとどまるものとされてきましたが、このところの相次ぐ不祥事を受けて、組織のあり方が見直されようとしています。理事会は教職員など学内関係者が中心となっていることで理事長の行為を監督できず機能不全に陥っているとして、評議員会を学外の者だけで作る組織に変えた上で、理事会に代わる最高議決機関に格上げしようという見直し案が浮上しているのです。
学校法人側は、学外者だけの評議員会では必要な議論をするのは困難と反発していますが、日本大学のような事件が起きると、そうした反発も弱り目に祟り目です。
いったいに学校法人のような非営利法人は法的に所有する仕組みがなく、したがって私物化することはできない組織なのですが、実態としては、創業家の一族が理事長の地位を代々世襲して私物化しているケースも少なくありません。
2016年3月7日、創業家一族に対する約8,600万円の不正支出の事実を公表したのは中高一貫校のかえつ有明中・高校や嘉悦大学を運営する学校法人嘉悦学園でした。報告された金額は2011年から2015年までの一部だけに限られますが、嘉悦克前理事長(76)は、公用車で通勤していたにもかかわらず「通勤手当」名目や、私的な会食を「渉外費」名目とするなどして約4,600万円が不正に支払われていました。また、妻(74)には勤務実態のない「特別顧問報酬」として約3,900万円が支払われていたほか、すでに死亡した母への支出も相当額にのぼることがわかっています。その他、法人事務局長で常務理事を務めていた長男も学園名義の法人カードを不正に使用していました。ちなみに、嘉悦学園はこの5年間に国や自治体から約30億円の助成金を受けながら、赤字経営が続いていました。こうした助成金の原資は税金ですから、せんじ詰めれば税金が創業家一族の奢侈に費やされていたことになります。
この事件で、理事長や事務局長を解任された創業家は、学校法人の経営から完全に身を引くことを余儀なくされ、「こういう形で嘉悦学園を去ることは斬鬼に堪えない」とのコメントを残して学園を去りました。