社会福祉法人改革の裏で巨額の売買
2022/02/03
社会福祉法人の私物化に歯止めをかける社会福祉法人改革のための法案が成立したのは、2016年3月でした。しかし、その裏で、この改革をあざ笑うかのように、社会福祉法人の巨額の売買が行われていたことが明らかになりました。
売り手は、広島県福山市の医師で、1994年に社会福祉法人サンフェニックスを設立して理事長に就任すると、広島県や岡山県で次々に特別養護老人ホームを開設して、中国地方でも有数の規模を誇るまでになっていました。そして、2014年6月には、最低売却価額35億円で売却の意向を表明していました。
現れた買い手は東京都内の公認会計士でした。会計事務所に飽き足らず、不動産投資にのめり込み、ビッグマネーを動かす大物を気取っていたといわれています。
二人は、交渉の結果、2016年3月に契約を締結し、総額42億円で理事長を交代して経営権を移転することに合意しました。この時点で、サンフェニックスには30億円の現預金があったと伝えられています。
おりしも社会福祉法人改革がスタートした2016年4月1日に理事長に就任した公認会計士は、サンフェニックスから20億円を引き出し、香港法人に付け替えて、この会社を医師に渡す形で代金を支払うという離れ業をやってのけていました。残りは10年分割で、5年間に11億円が医師に支払われていました。
社会福祉法人の経営には素人の理事長は、グループ会社などを使って資金を循環させ、損失を目立たなくすることにはたけていましたが、やがてそれも破綻の時を迎えます。サンフェニックスには、もう2,700万円しか残っておらず、従業員の給与も払えなくなっていました。
2021年9月に、負債総額60億円で東京地裁が民事再生手続きの開始を決定し、全てが明るみに出ることになりました。
これを受けて、広島県は、2021年10月に特別監査を実施しました。医師は、広島国税局の調査を受け、20億円の申告漏れを指摘されました。過少申告加算税を含めた所得税の追徴税額は、約9億7千万円とされています。