社団、財団で起こる横領事件の背景にあるもの
2017/03/16
電通といえば、誰もが知る大手広告代理店ですが、その電通が資金を出して作った財団法人で1億円にも上る横領事件が発覚したのは、平成26年3月のことでした。電通の中興の祖といわれた4代目社長の吉田秀雄氏の名を冠して昭和40年に設立された公益財団法人吉田秀雄記念事業財団で、電通から13年前に出向して事務局次長を務める60代の職員が、経理を1人で任されていた立場を利用して、平成18年から発覚するまでの間に、1億円以上の現金を横領していたというのです。横領したお金は、ほとんど競馬に使ったとかでもちろん残っていませんでした。
こうした横領事件が公益法人や一般社団・財団法人で数多く起きていることを憂慮した内閣府では、全国の公益法人や一般社団・財団法人に対して、再三にわたって注意喚起を行っています。内閣府が出した『事例から学ぶ財産管理』と題するパンフレットでは、3つの法人における実際の横領のケースが取り上げられていますが、まっ先に取り上げられているのがこの電通のケース。
2つ目は、全国に多数の支部を有する公益社団法人で、ある支部の経理係長が通帳と印鑑、キャッシュカードを1人で管理していたため、数年間で数千万円を横領したという事件。
そして3つ目の事例は、多額の現金を保有していたことから、現金の出し入れを1人で管理していた会計係長によって、1年半の間に数千万円の現金を横領されてしまった財団法人です。
いずれの事件も、現金や預金の管理を1人に任せていたことが直接の原因であることは言を俟ちませんが、そうしたことが起こりやすい背景には、やはり公益法人や一般社団・財団法人における役員や職員の当事者意識の欠如があるようです。どうせ自分のカネじゃない、自分のウチじゃないという感覚です。
そんな折、またまた横領が発覚しました。東京都港区にある一般財団法人住宅産業研修財団で、約5千万円を横領した経理担当職員が逮捕されたと2017年3月2日の新聞記事で報じられています。どうやら、社団、財団の横領の事例に事欠くことは、当分なさそうです。