納骨堂の課税はどこまで広がるか?
2017/01/03
人の死亡率は100%です。ですので、誰しも死ぬところまでは100%同じですが、その先は多少の違いが生じます。もっとも、我が国ではほとんどが火葬されて、遺骨が墓地に埋葬されると相場が決まっていました。ところが最近は、必ずしもそうとはいえなくなりました。大規模なエレベーター式の納骨堂ビルが登場して、遺骨がそのビルの中に置かれることも多くなってきたからです。
このエレベーター式納骨堂を巡っては、ちょっとした税務上の事件が生じています。舞台は東京都の港区赤坂、都心の一等地に平成25年3月に登場した5階建ての納骨堂ビルです。これは金沢市にある曹洞宗の宗教法人が建てたもので、約3,700基の遺骨を収容する能力を持つといいます。この納骨堂ビルに対して、東京都が固定資産税と都市計画税を課したことが事件の発端となりました。
もともと、地方税法で「墓地」と「境内地、境内建物」については、固定資産税、都市計画税は課すことができないと定められています。ところが東京都は、納骨堂は「墓地」ではない、またこのエレベーター式納骨堂は「境内建物及び境内地」にも該当しないとして、固定資産税、都市計画税を課税したのです。
宗教法人側は課税の取り消しを求めて訴えを起こしましたが、平成28年5月24日の東京地裁判決では、この納骨堂が「専ら、宗教団体としての主たる目的を実現するために使用している状態にあるとは認められない」、したがって東京都が主張するとおり「境内建物及び境内地に該当しない」として、宗教法人の請求を棄却しました。
東京都はかねてより宗教法人に対する固定資産税等の課税を強化していたことから、その一環として行っているものと思われますが、気になるのは、この課税がこれだけにとどまるのかどうかという点です。他のエレベーター式納骨堂にも課税が広がっていくのは避けられないとして、さらに懸念されるのは、固定資産税等だけではなく、影響が法人税等にも及ぶのではないかという点です。ペットの霊園のときは、境内地ではないとして固定資産税等が課せられるだけではなく、収益事業の倉庫業に当たるとして法人税等も課せられました。
墓地の永代使用料について、法人税法は不動産貸付業であっても収益事業から除外すべきものとして「墳墓地の貸付業」を定めており、エレベーター式納骨堂も、目下のところはこれに含まれるものと考えられていますが、果たして今後見直しの機運は出て来ないのかどうか、大いに気になるところです。