NPO法人の看板を悪用
2018/07/23
消費者の保護をうたい文句にしたNPO法人が消費者を食い物にする・・・。
いかにもありがちな話ですが、これを地で行ったのが、東京の池袋にある「NPO法人STA」です。消費者の保護といっても、そんなにむずかしい話ではありませんでした。テレビなどで盛んにCMを流している弁護士事務所や司法書士事務所でおなじみ、サラ金クレジットの過払い金の請求、正確にいうと利息制限法の上限金利を上回る「グレーゾーン金利」で生じた過払い金の返還金請求業務ですが、これに目を付けたNPO法人STAの経営者らが、NPO法人の看板を悪用して債務者を勧誘していたのです。そして、貸金業者から返還された過払い金を債務者に渡さず、騙し取っていたとして、平成30年6月に経営者ら二人が警視庁に逮捕された詐欺事件です。
新聞には2009年設立とありますので、どれどれと思ってインターネットで検索してみると、まず出てきたのが内閣府のNPO法人ポータルサイトです。そこには法人の目的として、「この法人は、不特定多数の市民に対し、生活の不安解消や改善を促すため、悪徳商法や債務に関する相談・セミナーを行い、消費者保護に寄与することを目的とする。」と出ていました。なるほど、「不特定多数の市民」と「消費者保護に寄与」という二つの言葉を結び付ければ、どんなに不埒なたくらみを持った人たちのグループでもNPO法人になれるというわけです。
それから、ホームページを探してみるとありました。NPO法人らしくない派手な宣伝文句が目立っています。「つらい借金生活から解放され暮らしが安定するまでサポートします。まずはお電話で改善への第一歩を踏み出してみませんか?」とあって、「お気軽にどうぞ。即日対応します。」は、まるでサラ金やヤミ金そのものを思わせます。
NPO法人が事件を起こすとマスコミで大きく取り上げられるのはいつものことですが、それにしてもこれまで補助金の不正受給程度にとどまっていたNPO法人の犯罪のバリエーションが、予想通りじわじわ広がってきつつあるという印象を持ちました。というのも、私たちの身の回りでNPO法人の看板を悪用とまでは言えなくても、NPO法人を客寄せに利用していると思えるケースはいくらでもあるからです。そうしたことが、今後、NPO法人全体の印象の悪化につながらなければいいと思うばかりです。