豊洲新市場への移転問題より重大なこと
2017/01/01
東京都の築地市場から豊洲新市場への移転の問題が連日マスコミをにぎわしていますが、築地市場を含む東京都の11市場が、どのように運営されており、どのような財政状態であるかかについて話題になることはほとんどありません。
今回は、この連載の第1回として、戦前は「地方公益事業」と呼ばれ、今は「地方公営企業」と呼ばれる公設卸売市場の累積赤字問題を取り上げてみましょう。
一般にはあまり知られていませんが、東京都の11市場からなる中央卸売市場は、独立した地方公営企業として損益計算書と貸借対照表を毎年公開しています。地方公営企業とは、自治体が経営する水道事業や交通事業などを行政の一般会計と切り離して会計などを行うもので、いわゆる社内カンパニーのようなものです。東京都は、築地市場を含む11市場の土地建物から冷蔵庫などの設備まで一切を所有し、卸売業者に使用させて使用料を得ているのですが、その実態とはどのようなものでしょうか。
平成26年度の決算資料によると、築地市場を含む東京都の11市場の総売上高は1兆2千億円を上回る規模となっています。これは卸売業者の総売上高です。それに対して、東京都が受け取る売上高割使用料は30億円、冷蔵庫などを含む施設の使用料は80億円程度となっていて、両方合わせても卸売業者の総売上高の1%にも満たないレベルです。
一般のテナントであれば到底考えられない賃料です。当然のことながら、ここから営業費用を引いた営業損益は常に赤字で、平成26年度は20億円の営業損失が出ています。これを東京都や国からの補助金で補てんして何とか辻褄を合わせているというのが中央卸売市場の会計なのです。ちなみに、中央卸売市場の総資産は7,700億円と莫大な金額に上りますが、この全てが借入金や都民からの税金で賄われています。
つまり東京都は、公設市場の建設と運営に莫大な税金を注ぎ込み、それを特定の業者に安価な金額で提供しているというわけですが、そこには市場関係者と行政の利害関係が深く絡んでいるといわれています。もっとも、これは東京都だけの話ではなく、どこの自治体でも、他の公共事業でも行われていることだというのですが、いずれにしてもこの構造を放置する限り、そのツケが住民に回ってくることだけは間違いないのです。